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◇ 工務店って何なの?

街を歩きますと至る所に、〇〇工務店、◇◇ハウス、△△ホームなどの看板を目にします。ところが、◇◇ハウス、△△ホームは何となく分かるけど、工務店とは、どういう類の会社でどんな仕事をしているのか、実は正確に理解している人が意外と少ないようです。そこで工務店のことを少し詳しく説明しておきます。(実際には、◇◇ハウス、△△ホームも同じような業務内容の場合が多いのですが……)

▼ 犬小屋を作る ≠ 家を造る

家を造るには色々な方法と言いますか手段があります。まずそのことから説明しておきます。
家を造るのに一番納得出来て安くあげる方法は、自らの手で造ることです。
犬小屋模型ホームセンターで材料を買い自分で犬小屋を作るようなものです。ところが本物の家造りとなりますと、日曜大工で犬小屋を作るのと同じように造れるでしょうか。
ま、出来ないことはないでしょうが大概の人は多分無理だと思います。
そこで、どうしても家造りの専門家に注文して、家を造ってもらうことになります。
そうなりますと当然、その専門家に支払う経費(手数料・利益の類)が発生します。まさかボランティアで家を造ってくれる人なんている訳がありませんので、この辺のところは理解していただけると思います。
そこで理解しておかなければならないのが、注文の方法(仕方)によって建築費が違ってくるということです。

では、注文の方法(仕方)にはどのような方法があるのでしょうか。

▼ 家を注文する方法

注文の方法(仕方)を次のようにまとめることが出来ます。
図面の製本その前に、建築図面が無ければ見積もりはもちろん工事はできませんので、前提として、これらの図面が既に作成されているものとします。建築図面については別メニューで述べます。
尚、ここでの話の展開は、建売などの既に出来た家を買う時の話ではなく、自由設計でも規格型設計のどちらでもいいのですが、これから新たに家を建てることを前提にしていますので、そのイメージで読み進めてください。

自分で各専門施工業者に工事を直接依頼する

例えば、
基礎工事基礎を作ってもらうのに、基礎工事を専門にしている業者なり、職人さんに直接工事を依頼したとします。その前に、いくらで造って貰うかを決めておかなければなりません。つまり見積書を提出して貰い、金額が妥当かどうか検討して決める訳です。また、どういう基礎の形状とか配列とかにするかを決めなければなりません。
これらは一般に基礎伏図という図面で表現される訳ですが、
手元にありますか?
なければどうしますか?
建築(意匠)図面がある訳ですので、基礎工事屋さんにお任せしますか?
鉄筋の数や径は適切なのかどうかチェックできますか?
いずれにしても、このような手順を経て工事が完成して工事代金を支払います。ふぅ~ 大変な作業ですね。このような作業を各施工業者毎に行わなければなりません。

ちなみに、どんな専門工事があるかを簡単な解説をくわえながら列記してみます。

〇 解体工事
既存の建物を壊し、その上に再建築する際に、家の取り壊しを専門にしている業者です。最近は環境問題で分別解体が義務付けられていますので、とても高い費用が掛るようになりました。
〇 基礎工事
建物の基礎工事を専門にしている業者です。
〇 足場掛工事
外部の作業、例えば屋根や外壁や塗装や樋工事などをする時に、この足場に乗って作業します。万一作業中に落下物が発生しても、通行人や近隣等に迷惑が掛らないように養生網を施します。
〇木材加工
柱材や梁材などを搬入します。最近はあらかじめ工場で継ぎ手などをカット(プレカット)した材料が持ち込まれます。
〇 木工事
いわゆる大工さんの工事です。
〇 屋根工事
瓦やコロニアルなどの屋根工事を専門にしている業者です。
〇 サッシ工事
窓の取り付けですが、これは大工さんの仕事です。
〇 外装工事
サイディング貼りや外装用の板張りなどをする業者です。板張りの場合は大工さんがするケースもあります。
〇 板金工事
板金工事は特に屋根などで外壁との取り合いの部分を鉄板や銅板で雨仕舞します。
〇 雨樋工事
屋根に降った雨をまとめて雨水マスまで導きます。エンビ製やステンレス製などがあります。
〇 建材搬入
床のフローリングや石膏ボードなどの建材を搬入する業者です。窓枠材や巾木・廻り縁さらに既製品の木製建具なども搬入したりします。場合によっては、住設品のシステムキッチンやユニットバス、洗面台なども搬入するケースもあります。
〇 内装工事
壁紙やクロスあるいは床のクッションフロアなどを専門に施工する業者です。
〇 左官工事
外部の土間のモルタル塗りや巾木のモルタル塗りなどの施工をします。タイルや石工事などもします。昔は外壁をモルタル塗りして、リシンという吹き付け材で化粧するケースが多かったのですが、最近では殆どサイディングになってしまいましたから、左官屋さんの仕事も減ってしまいましたね。
〇 塗装工事
いわゆるペンキ屋さんです。軒裏などの塗装をします。内部の窓枠や建具の枠が工場加工製品になってしまい、塗装をするヶ所が極端に少なくなってしまいました。
〇 電気設備工事
電灯やスイッチ・コンセントなどの配線工事をします。電気温水器やエアコンの工事をする場合もあります。
〇 給排水設備工事
水道の給水や排水の配管工事や、トイレの便器類、洗面台などの取付工事をします。浄化槽がある場合には、その工事をする場合があります。浄化槽工事を専門に工事している業者がありますので、直接そこに工事を依頼することも出来ます。給排水業者の下請けとして工事する場合もあります。
〇 外構・造園工事
ブロック積や門や塀の工事を専門にしている業者です。造園は植栽工事を主に施工している業者です。

タタミ主なものを列記してみましたが、この他にもタタミ工事や襖・障子工事などなどたくさんあります。各施工業者から見積書を取り、金額を決めて、それぞれ工事依頼をします。
もしも自分の家を造る時に、コストを安くする為に、自らが発注者となって各専門の業者に直接工事を発注することを考えてみてください。
この一連の作業が出来ますか?第一、各作業にはそれなりの専門知識が要ります。業者の施工技術の程度も色々です。工事を管理する知識も暇も無い。とてもじゃないけど「無理だなあ」と思いませんか?
そこで思い立つのが、信頼がおけて自分の代わりをしてくれる人や会社があれば、そこに頼めばいいじゃん・・・ となりませんか?そうなんです。

工務店に工事を依頼する

と、こうなる訳です。もう説明の必要はないでしょう。
あなたに代わって見積書の作成、工事の手配と管理、アフターメンテナンスなど、一連の家造りに関する作業を一手に引き受けてくれるのが工務店です。
名前は違いますが◇◇ハウス、△△ホームなども同じことです。
あなたに代わってこれ等の事をしてくれる訳ですので、当然手数料といいますか、それに見合うだけの経費を支払ってあげなければなりません。
さて、ここまでは大体理解できたとして、じゃ信頼のおける工務店って?となりますね。
あなたに代わって安心確実な工事をしてくれる信頼できる工務店 う~ん。看板は一杯あるけど、どこが信頼できるかは皆目分からないなあ。が本音だろうと思います。

信頼できる工務店の見分け方

これは実に難しいテーマです。
何故かと言いますと、信頼できるかどうかは一つに人間的な要素が大きく関わってくるからです。

  • あの人はいい人だ。だから=信頼できる? 違うと思います。
  • 社長が人望が厚い。だから=信頼できる工務店だ? 違うと思います。
  • 大きい会社だ。だから=任せて安心? 違うと思います。
  • 工事実績が豊富。だから=信頼できる工務店だ? 違うと思います。


工務店から見たあなたは、
大勢のお客さんの中の一人ですが、
あなたから見た工務店は,
1対1の世界です。

会社が大きくなればなるほど、受注を沢山しなければ会社が成り立ちません。
多くの社員を抱えなければならない分、給料などの出費もかさみます。これは何も家造りを専門にしている会社ばかりではなく、どこの会社でも言えることですよね。
ただ家造りを専門にしている会社が、他の例えば物販などの会社と大きく違うのは現場作業だということです。また多くの職人や専門施工業者が、現場で決められた作業をするということです。

「そんなの分かってるよ」と言われるかもしれません。ここで良く考えてみてください。もう一度言います。

工務店から見たあなたは、
大勢のお客さんの中の一人ですが、
あなたから見た工務店は、
1対1の世界です。

しかも現場に出入りする職人はもちろんですが、特にあなたの家の工事を管理する責任者は、家造りに関するそれ相応の知識と経験を要求されます。そうでないと職人任せの、場合によってはイメージと違う家になってしまうことすら危惧されます。

くどいようですが、もう一度言います。

工務店から見たあなたは、
大勢のお客さんの中の一人ですが、
あなたから見た工務店は、
1対1の世界です。

もうお分かりだと思いますが、そうなんです。
今まさにあなたが思っていることが正解なのです。
多くの営業マンと多くの建築社員が、多くのお客さんのお守をし多くの現場を管理する。このことは一見当たり前で極々普通のことだと思われているかもしれませんね。

実は私は大手の住宅会社に建築社員として長年勤務していましたが、一人の建築社員が受け持つ現場の数は5~10軒でした。最近知り合いの地場の現場担当者に聞いても同じような答えでしたから、ほぼそう思って間違いないだろうと思います。

参考 ハウスメーカーを退社する理由

こうなると大変です。
あなたから見た工務店は1対1じゃなくなってしまうからです。あなたは1/5~1/10のお客様なのです。
一人の建築社員が管理できる能力を大きく逸脱しているようでなりません。
どう思われますか?
たとえそれが可能だとしても、言葉は悪いかもしれませんが、恐らく魂の入らないただの器が出来たに過ぎません。
それこそ、
基礎の厚み基礎の配筋はちゃんとしているのでしょうか。コンクリートの厚みはちゃんと確保されているのでしょうか。

筋違筋違(スジカイと読みます)の向きや取付く金物が、決められたところに取り付けられ、釘やビスは、所定のところにきっちり打たれているのでしょうか。

工事担当者があなたの家とは違う別物件の所に足を運んでいる間も、あなたの家の工事は休むことなく確実に進んでいきます。その間上記のチェック漏れが完全に無いとは言い切れないのではないでしょうか。

信頼できる工務店とは、あなたの家をマンツーマンで管理してくれるところです。

まず、このことが前提になります。
その上で、代表者の人柄や家造りに対する情熱はもとより、そこの技術力、施工力、実績等々の評価の高い工務店が信頼できる工務店ということになります。

そもそも、お客様を正面にとらえ、お客様の家造りに対する心を十分に反映した家を提供出来ない工務店に、何が出来るというのでしょうか。お客様からの「満足」の二文字は得られないと思います。

少々苦言になりましたが、それだけ家造りは大変なエネルギーを注ぎ込まないと、良い家には決してならないことを長年の経験を踏まえて言いたかったのです。

ついでにお話ししますと、工務店とか◇◇ハウス、△△ホームの中で、お客様からいただいた工事を他の建築業者に一括して発注している会社があります。
いわゆる丸投げ会社と言われている会社ですが、このような会社が結構多いと聞いています。
これは法律でも厳に禁止されていますしもう論外です。くれぐれもご注意下さい。

▼ 工務店の実態

先述しましたように、建築費を安くする上からも、本来は建主(施主)自身が専門業者に直接発注して工事するのがベストなのです。
私の場合で申しますと、私は一級建築士で、長年にわたり設計や施工管理・資材の発注・見積書の作成などの豊富な経験がありますので、私自身が我が家を建てる場合には、このやり方が出来ます。私とあなたの違いはこの実務上の経験の差だけです。
ところが、この実務上の経験の差が直発注できるかどうかの差になる訳ですね。
経験のない方が、どうやって見積書のチェックが出来ますか?
知り合いに明るい人がいるからその方にチェックを依頼しますか?
知り合いにそういう方がおられる人はラッキーな方です。

工程にあわせて遅滞なく資材を現場に搬入しないと、それこそ大工さんにブーイングされます。
彼らは資材搬入の遅れで仕事が出来ない状況(手待ちといいます)を一番嫌います。どのタイミングでどの資材を現場に搬入するかの判断は経験がものをいいます。

ほんの一例を書きましたが、ことほど左様に家造りは豊富な経験が要求されます。
あなたは代価を払ってこの家造りの経験を工務店から購入しなければならない訳です。

ところが、一見してどの工務店が優秀で豊富な経験の持ち主なのかが判断出来ないから始末が悪い訳ですね。
さてどうなさいますか?
工務店には、それこそパパママ会社から大きな会社までいろいろな会社があります。

突然ですが、ここでもう一度このページをご覧下さい。

何故、ここでご覧いただきたいのかと言いますと、工務店の実態が浮き彫りに出来るからです。ではその実態について考えてみましょう。

商売に走る工務店とプライドで仕事をする工務店

受注競争の激化がもたらす利点と弊害について少し考えて見ましょう。
会社を運営するからには売り上げが無ければ会社が成り立ちません。
競争が激しくなればなるほど、勢い無理な受注の繰り返しを余儀なくされる場合があります。施主側から見ますと、競争の中で生まれる建設コストの低減は一見ありがたい話のように思えますが、果たしてそうでしょうか。

無理な受注、つまりあまり利益の無い受注ばかりをしている工務店にとって、会社の最低限の経費を捻出できない事態が発生し、じわじわと経営を圧迫する危険性をはらんでいます。
それでもお金が回りさえすればいいんだと主張する経営者がいます。
この点は、ま、理解するとしても、ここで経営者は請負った物件から、できるだけ多くの利益を上げなければならないと考えるのは必然です。その為にはどうすればいいかを考えます。

全てがそうだとはもちろん言いませんが、だいたい以下のようなことをする筈です。

  1. 下請け業者を叩いて(言葉が悪いですね)利益を上げる。
  2. 資材メーカーを叩いて利益を上げる。
  3. 使う資材や設備品ののグレードを下げる。(お客さんには分からないようにします)
  4. 契約書や図面や見積書はなるだけ簡単なものにする。(逃げを打つ)

いわゆる商売に走る工務店のパターンです。
結果として安かろう悪かろうの家が出来る可能性があります。何故そこまでしても無理な受注をするのでしょうか?
会社によっていろいろな事情がありますので、一概に軽々しくは言えませんが、従業員の給料をはじめ、会社運営上の諸経費を捻出するには、何処の会社にも適正な利潤が必要です。
その適正な利潤を生み出すだけの体力(経営力・営業力・技術力・施工力等)が無いままに、目先の売上欲しさに走ってしまうが為に、肝心の家づくりの心が、いつの間にかどこかに吹っ飛んでしまう訳です。
それでも、いや、だから、受注はしなければならない。無理をしてでも……。

外見では分らないこれらの実態が、恐らく大なり小なり何処の工務店でもある筈ですが、お客様が知る由がありません。
自分の家の工事が始まり、あれ!こんな筈ではなかったのに!なんて事が出てきます。

家づくりは技術の世界です。少なくとも私はそう確信しています。
技術にも色々あります。デザイン力もその一つでしょう。資材の選択眼もその一つでしょう。当然、各部材の特性・特徴・寸法等々の知識もその一つでしょう。

技術を正しく現場に反映するには、技術に関する高い能力が求められますし、と同時に、実際に施工する専門職を管理する能力も求められます。
私はこれらを総称して施工力と呼んでいますが、施工力の高い低いが実は、家の出来栄えを大きく左右するといっても過言で無いような気がします。
もちろん、家を造るにはそれ相応の費用(建設費)がかかります。お客様がそれを負担する訳ですが、建設費に見合った家づくりを真剣に議論し、納得のいく結果を導き出す努力をお互いがすべきものと思います。

プライドで仕事をする、いい意味での職人気質的な工務店は、

  1. 商売は下手でも、自分の造った家に誇りを持ち、
  2. 地域に根付いた、
  3. フェース ツー フェース の家づくりを心掛けている。

ように思います。

実は、このような真摯な姿勢こそが家づくりの根幹をなすものだと強く思います。
そして、この姿勢こそが結果として人の心をつかんで離さない人気のある工務店の真の姿であり、必然的に経営も安定してくるものと思われます。

本来家づくりは楽しいものでなければなりません。
また家造りは感動を与えるものでなければなりません。
お客様にとってこれほど大きな買い物は無いでしょうし、結果として、やはりその金額に見合った喜びを享受できて、初めて、あの工務店に頼んで良かったなあとなるのではないでしょうか。