<欠陥ヶ所(A)>
この写真を見てどう思いますか?ひどい仕事をしてると思わず目を覆いたくなりませんか?
ゴツゴツしたコンクリートの上に、申し訳なさそうに防湿フィルムを敷き、その上に束を立てています。これだと少しの振動で束がはずれ床が下がってくることは明白です。しかも束は防蟻処理もしてないようですし、廻りに散乱している木屑はシロアリの格好の餌になってしまいます。
束はただ立てれば良いということではなく、それなりのちゃんとした意味があることを知るべきです。
<Aの正しい施工法(参考)>
これは同じ束でも、鋼製束と呼ばれるもので、良く使われているものです。
高さの調節が自由に出来、耐久性に優れています。木束のようにシロアリに食われる心配もありません。
下のほうに、白いものが見えますが接着剤です。上のほうのビス穴にビスが打たれて固定されます。



<欠陥ヶ所(B)>
ちょいと見ではなんとも無いようですが・・・
まず土台の継手(土台と土台のジョイント部)が、基礎の上に乗っていませんね。これは致命的なミスです。
また写真では分かりにくいですが、床を支える大引きと、床束を緊結する金物(カスガイという)が、打たれていないところが数多くあり、まことに恐ろしい仕事がしてありました。
恐らく、時間の経過とともに、床が下がり、床鳴りがしてくること必然です。
<Bの正しい施工法(参考)>
床束の施工精度によって床が下がったり、床鳴りがしたりしますので、いっそのこと床束そのものを無くする方法は無いものかと考えた末にあみ出した工法を紹介します。
左の写真はその方法で施工した床組の写真です。床を構成する部材を一回り太くして、床の荷重に安定的に耐えられるようにしてあります。この方法の良い所は床下に余計(床束等)なものが一切無く、施工が早いというところです。
欠点は基礎工事にかかる費用がややかさんでしまうことですが、床が下がったり、床鳴りがしたりするのを防げるほうに、価値を見出したほうがいいかなと思います。
但し、この方法を採用するには、それなりの構造的(力学的)な知識が無ければなりませんので注意が必要です。



<欠陥ヶ所(C)>
この施工業者はアンカーボルトの施工に無知だったとしかいいようがありません。ただアンカーボルトを基礎の中に入れればいいというものではありません。アンカーボルトの埋め込み深さやねじ山の寸法など、基本的な考えや理解力が欠落しますとこのような仕事になってしまうんですね。いざ土台をアンカーボルトで締め付けようとしても、締め付けが出来ない、座金を2枚も3枚も重ねてもこの写真のような状態です。こんなことは素人の方でも分かりますよね。あぁ~ 開いた口がふさがりません。
<Cの正しい施工法(参考)>
基礎と土台を緊結するアンカーボルトの役割の重要性は論を待たないでしょう。アンカーボルトの基礎への定着寸法(埋め込み長さ)や埋め込み位置など、極めて重要な部分ですので、高い施工精度が要求されます。
左の写真では、土台の下に基礎パッキンといわれるものが施工してありますが、これは、土台と基礎の間に空間を設け、換気を良くすると同時に、シロアリなどの害を防ぐために開発されたものです。基礎パッキンは長さ910mmも開発されました。



<欠陥ヶ所(D)>
柱と桁・梁の接合部分は、継手方法、金物の緊結方法、位置など構造上極めて重要な部分です。
写真では、柱と桁材が十分に緊結されていません。大工による刻み(手加工)の技術レベルも低く、これだと、少しの振動でも建物が傾いてしまう心配があります。
<Dの正しい施工法(参考)>
工場であらかじめ加工された(プレカット)部材の精度は、手加工よりもかなり高く、一度組み立ててしまいますとなかなか取り外すことが出来ません。ですから、その分強度も増し、また木屑などに残材が出ませんので、最近ではほとんどの現場で採用されています。
取り付く筋違などの金物、羽子板など、所定のヶ所に決められた施工方法で、きっちり施工することが望まれます。



<欠陥ヶ所(E)>
小屋の桁が下がっていました。どの程度下がっているかを調査しています。赤い糸が水平レベルです。このレベルと桁天端との差が問題です。写真では手で分かりにくいですが、ここに柱があります。よく見て下さい。柱の上で桁が接合されています。柱の上での継手、接合の件は、いろいろ議論があるようですが、鉛直荷重や水平、垂直の振動などを考えますと、好ましい方法ではないと思っています。柱は、そのほかに下から突き上げる地震などの、振動を伝達する部材でもある事を忘れてはならないと思います。
<Eの正しい施工法(参考)>
横材の継手位置は、写真のような位置が良いとされています。柱の芯から150mm~300mm程度です。これは、応用力学上のちゃんとした根拠に基づいていますので、現在、大抵のプレカット工場での標準になっているようです。
その他、金物の取り付けなどは参考にして下さい。