(学習研究社/「日本の民家」第八巻・洋館より) しかし、日本の洋風民家の歴史から学ぶべき点は多々あると思います。その様式やスタイルは、今日の住まいづりに少なからず影響を与えていることは否めません。 |
旧ハッサム住宅兵庫県神戸市中央区明治三五年(一九〇二年) 木造二階建 桟瓦葺 建築面積 一七三・六㎡ ハッサム邸は、英人貿易商K・ハッサムの住宅として建てられた。神戸の中小異人館の典型的なスタイルで、細部に古典的なモチーフを巧みに使いこなすなど、洋風建築としてかなり優れたものになっている。建物は木造軸組工法で寄棟造。外壁は白漆喰塗と緑褐色ペンキ塗り仕上の下見板張り。前面には中央部を多角形に張り出させた、二階吹放ちのベランダがある。屋根や二階手摺に中国風の趣があるのは、初期の洋館と違い、建築家が意識的に狙った効果といえる。一階の軒下を飾るスパンドレルはアーチ型に、二階は水平に、そして一階の開口部は三角形ペディメントをもつエディキュラ(家形の窓飾り)、二階は水平ペディメントのエディキュラとなっている。また、この建物は古材を転用して建てられたものであることがわかり、前の建物がさらに古い異人館の様子を伝えるとともに、木の強さを物語っている。 |