旧西郷従道住宅-内部 日本の木造洋風住宅の歴史
(学習研究社/「日本の民家」第八巻・洋館より)

日本の木造洋風住宅の歴史は140余年とまだ新しい。
しかし、日本の洋風民家の歴史から学ぶべき点は多々あると思います。その様式やスタイルは、今日の住まいづりに少なからず影響を与えていることは否めません。
旧西郷従道住宅-外観

旧西郷従道(つぐみち)住宅

愛知県「明治村」
明治一〇年代(一九七七~八六年)
木造二階建 銅版葺
建築面積 二五二・二㎡
この建物は、もと東京上目黒の旧西郷従道別邸内に建てられていたもので、広大な和風庭園の中の応接所として用いられていたようである。ベランダの手摺は細い鋳鉄(ちゅうてつ)製、柱頭のない細い柱、ゆるい勾配の屋根、軒飾りや手摺の繊細な切抜き板など、格式ばらず全体として軽快で瀟洒(しょうしゃ)な雰囲気を演出し、擬洋風やコロニアル調が全盛の明治初期の洋館では、珍しく洗練された外観となっている。この意匠は十九世紀後半のフランス国民の生活が一番安定し、華やかだったいわゆるベル・エポックの雰囲気を伝えるもので、公園内の東屋(あずまや)や、森などに造ったフォリー(遊びのための小屋)を思わせる。また、この建物は強さを誇る日本の伝統工法、木造軸組工法(もくぞうじくぐみこうほう)に加え、地震に備えて建物の軽量化と安定化を図るなど、現代でも重要視されている問題に対応しているところに、大きな注目を集めている。