旧西郷従道住宅
愛知県「明治村」
明治一〇年代(一九七七~八六年)
木造二階建 銅版葺
建築面積 二五二・二㎡
この建物は、もと東京上目黒の旧西郷従道別邸内に建てられていたもので、広大な和風庭園の中の応接所として用いられていたようである。ベランダの手摺は細い鋳鉄製、柱頭のない細い柱、ゆるい勾配の屋根、軒飾りや手摺の繊細な切抜き板など、格式ばらず全体として軽快で瀟洒な雰囲気を演出し、擬洋風やコロニアル調が全盛の明治初期の洋館では、珍しく洗練された外観となっている。この意匠は十九世紀後半のフランス国民の生活が一番安定し、華やかだったいわゆるベル・エポックの雰囲気を伝えるもので、公園内の東屋や、森などに造ったフォリー(遊びのための小屋)を思わせる。また、この建物は強さを誇る日本の伝統工法、木造軸組工法に加え、地震に備えて建物の軽量化と安定化を図るなど、現代でも重要視されている問題に対応しているところに、大きな注目を集めている。
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