旧岩崎家住宅-内部 日本の木造洋風住宅の歴史
(学習研究社/「日本の民家」第八巻・洋館より)

日本の木造洋風住宅の歴史は140余年とまだ新しい。
しかし、日本の洋風民家の歴史から学ぶべき点は多々あると思います。その様式やスタイルは、今日の住まいづりに少なからず影響を与えていることは否めません。
旧岩崎家住宅-外観

旧岩崎家住宅

東京都文京区
明治二九年(一八八六年)
木造二階建 スレート葺
建築面積 五三一・五㎡
旧岩崎家住宅は、明治の財閥岩崎弥太郎の長男、岩崎久弥の邸宅で、現在は最高裁判所司法研修所として転用されている。
この建物は、日本の近代建築の育ての親、英人建築家ジョサイア・コンドルの作品で、全体的にはクラシックを基調としながら、庭園からの眺めを考慮して、東西南北それぞれにまったく異なる印象をもたせている。北面の柱型やドーマー窓、ベランダ手摺などはフランス・ルネサンス風。南面に面した開放廊はイタリア風、東面は英国風、玄関上部の塔にはサラセン風の半月飾りを取り入れ、構造的には日本の伝統的な木造建築の工法を用いて、東西の様式の融合を図っている。こうした手法はコンドル独特の折衷主義である。この時期の西洋の建築家が東西の様式の折衷に苦悩していたことを考えれば、この旧岩崎家住宅は、世界の近代住宅史の流れの中で位置づけられる建築といえるであろう。