構造用合板の方が耐力倍率が高いから良いという判断は間違っています
◆ 実例を挙げて詳しく考察 ◆
単に外壁全面を構造用合板にした方が耐力倍率が高いから良いという判断は間違っています。何故かといいますと、あくまで偏心率の数値を司っている、重心と剛心の位置関係から耐震度を判断しなければならないからです。重心と剛心のバランスが大きく崩れた場合は、倒壊の危険性が増すことを認識しておくべきだと考えます。ここでは、実例を挙げて詳しく考察してみたいと思います。
▼ 構造用合板のみの場合のデータ▼ 構造用合板+内部筋違の場合のデータ

1階平面図

1階平面図

2階平面図

2階平面図
◇ 平面図の考察
左側は外壁外周に構造用合板を取り付けた場合の平面図です。右側は偏心率を限りなくゼロに近づける為に内部に筋違を取り付けた平面図です。ここでは筋違をたすき掛けにしている壁もありますが、断熱材の施工等を考慮して、筋違ではなく構造用合板を内壁に取り付けても結果は同じですが、納まり上、石膏ボード等の下地材の厚みとの関係を考慮する必要があります。
参考 ⇒ 偏心率は何故0に近いほうが良いのか
共通データ
  
◇ 共通データの考察
柱直下率、間仕切直下率、耐力壁直下率のそれぞれの計算結果です。数値がかなり高く理想的です。多少凹凸がありますが、1階と2階の平面形状がほぼ同じの総2階建ということもあり、このような結果になっと思われます。例外もありますが総2階建ての場合、大抵このような数値になります。言えることは、上記の数値を高める為には、特に間取りをつくる時に、間仕切や開口部の位置等、上下階の位置関係に配慮した方が高い数値を得られ、良い結果を導き出せるということになります。

X面耐力壁量計算

X面耐力壁量計算

Y面耐力壁量計算

Y面耐力壁量計算
◇ 耐力壁量データの考察
左側のY面耐力壁量計算の結果を見ますと、法的に必要な壁量に対して、1階の壁量が不足しています。勿論最終的には、内部に構造用合板又は筋違を取り付けることで、数値そのものは軽くクリアできますが、問題は取付位置です。
偏心率を限りなくゼロに近づける為に、筋違の位置を変更しながらシミレーションしますが、右側はその計算結果を表示しています。筋違の位置は平面図を参照して下さい。このように、内部の筋違の位置が耐震上極めて重要になってくることがお分かり頂けるかと思います。結果として全体に壁量が大幅に増加しますが、これが当然のことで、ただ法的な数値のみをクリアすれば良いという考えに疑問を投げかける結果なっています。
余談ですが、単一壁の耐力倍率は最大で5倍までと法的に定められていますので、計算上、5倍を超える場合の数値は5.0で計算されることになります。

1階耐力壁偏心率計算

1階耐力壁偏心率計算

2階耐力壁偏心率計算

2階耐力壁偏心率計算
◇ 偏心率データの考察
偏心率は法的にX方向Y方向共に0.15以下と定められています。この数値を超える建物は極めて危険で、倒壊の危惧があるとされています。左側は単純に外壁外周を構造用合板にしただけのプランのデータですが、1階2階の数値を見て下さい。ゾッとするような数値になっています。共通事項のところで、このプランは、柱直下率、間仕切直下率、耐力壁直下率の数値が高く理想的な建物だと述べましたが、残念ながら、耐震上、このままでは危険な建物と言わざるを得ません。つまり、剛心から重心までの距離が離れすぎている為に、建物が激しく揺さぶられて倒壊してしまう危険をはらんでいるということになるのです。
右側の数値を見て下さい。X方向Y方向共に殆どゼロだと言って良い数値です。剛心と重心がほぼ同じ位置にあります。実際には地盤の地耐力や基礎形状等のチェックはしなければなりませんが、右側の設計の場合、地震等の大きな外圧が建物にかかったとしても、被害を最小限に食い止めるだけの強度を備えている建物だ、と言っても過言ではないと思います。
参考 ⇒ 偏心率は何故0に近いほうが良いのか

そこで最終結論です。
単に構造用合板の方が耐力倍率が高いから良いという判断は間違っています。
家を造る時は、上記の5つの耐震チェック項目をクリアした建物を造らなければなりません。
特に偏心率を限りなくゼロに近づける為に、
あらゆる角度からシミレーションして耐力壁の位置を決定しなければなりません。



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