作家 川北町二 魅惑の世界

第2話 美への衝動

◇ 第2話 美への衝動

その日は、朝から雲の多い日でした。窓から見えるはるか遠くには、濃い灰色の雲の下に白みがかった薄緑の山が横たわっていました。客はランチタイムの過ぎた時間帯にしては結構な賑わいです。  しばらくして、女店員のしなやかに伸びた白い手が、注文していた珈琲を楕円の形をしたアンティークなテーブルに置きました。テーブルの色彩と洒落た器の中で、出窓からの明かりを帯び揺れている液体の色が、わずかに立つ湯けむりの中で、私に微笑みかけているように見えました。
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