作家 川北町二の魅惑世界

◇ 折り畳んで来た悲しみ

ある老婦人の物語
私が出会ったある老婦人の物語の続きです。

しばし縁に腰掛けて、その老婦人の身の上話を聞かされました。とても身につまされる話でした。
今日までお嫁にも行かず、独身を貫いてきたそうです。一人の女として80歳になるまでの、数々の苦労話を涙ながらに語ってくれました。私も思わずもらい泣きするところでした。
私の訪問(初めての通りすがりの私でしたのに)がよほど嬉しかったとみえて、老婦人は私に、部屋の中に上がるように言いました。さすがに私も躊躇しましたが、熱心な誘いに負けて、あがり込んでしまいました。
紙細工ところが、部屋に入り、びっくりしました。部屋中に所狭しと、その老婦人が作ったと思われる作品が飾られていました。ほんとに足の踏み場の無いくらいに、それらが飾られていました。お花の時と同じように、一つ一つを指差しながら、作った時の思い出とともに説明してくれました。その時、私はこのおばあちゃんの人生を見たような気がしました。
若いころは、きっと綺麗な方だったろうにと思わせるくらいの顔立ちでした。不運な自分の人生を悔やむことなく、いやむしろ、その悲しみを一つ一つ織りたたんでいく事で、気を紛らわせるために写真のような作品(これ以外にもいろいろな飾り物などの小物が一杯ありました)を、一心不乱に作ってきたに違いありません。きっと気丈夫な方なのだろうとも思いました。

私は、再会を約束して老婦人と別れました。庭先を通り過ぎるとき、先ほどデジカメに収めた花たちも別れを言っているかのようでしたが、何故か悲しそうな顔に見えました。

路上に駐車していた車に乗り、ハンドルに手をかけた時、私の心が何かに激しく突き上げられるのを感じました。

この老婦人の事をもっと適切に表現するには、あまりにも私の筆のお粗末さを痛感しています。これを書きながら目が潤んでくるのを覚えました。

深夜来て 織り成す手先に 涙落ち にじむ明かりに 老いの慟哭
折り畳んで来た悲しみ
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