◇ 第一章 説得 人口50万人程のK市で生まれた水島佐太郎は、地元の高校を卒業後、漁港近くに構える産業廃棄物会社に就職した。そして今、勤務歴15年余りが経過しようとしていた。カンパチの養殖業を営んでいる父親が、65歳を過ぎてもなお身体に鞭打って働いている姿を見て、少しでも楽させてあげたい思いから、会社勤務の合間を縫って、時々手伝いをする日常が随分と長く続いていた。 短編小説 波の標