小説 めもるの奇跡 ◇ 第1章 帰郷 横浜市港北区の大倉山駅で東横線の電車に乗り、終点の渋谷駅で山手線に乗り換えて、東京駅の改札口で切符が無造作に機械に吸い込まれた時、早川の腕時計の針は十八時を少し回っていた。 折りしもラッシュアワーと重なり、東京駅は異様なほどの混雑を見せていた。いや、これが日常のことなのだが、早川悟はその度に異様さを感ずるのである。 2023.06.13 2024.02.16 小説 めもるの奇跡