この物語は正義感に満ちた一人の男の物語です

小説 めもるの奇跡

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◇ 第14章 変化の芽吹き

早川が次の日の月曜日に出社した午後の三時頃のことだった。関東建設日報の内村から会社に電話が入った。「ご無沙汰です。今、いいですか?」「例の件ですか?」「はい。そうです」「内村さん、すみません。今、手が離せない事情がありますので、改めて、私の方から電話したいのですが、宜しいでしょうか?」
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◇ 第13章 姉弟の契り

翌朝、佐知代は早い時間に会社に電話して、出社しない旨を伝えた。そして、悟が寝室でぐっすりと眠っているのを確認して、再び自分の寝室のベッドに身を横たえた。完全な二日酔いである。頭が重たい感じがした。目が覚めた時は十時を回っていた。リビングルームのカーテンを開き急いで台所に向かった。
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◇ 第12章 理性喪失

三月に入った金曜日の夕方、甲斐オーナーから電話が入った。「早川さん、ご無沙汰」「あ、オーナーいつもお世話になっております。こちらこそご無沙汰です。お元気でしたか?」「元気、元気、すこぶる元気よ」「あはは、何か、特殊なドリンク剤でも飲んでいらっしゃるのではないですか?」
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◇ 第11章 岐路

環太平洋建設内では朝礼時の社長による年頭の訓示があった。 早川は、年頭から猛烈な勢いでC&Tの部下達を陣頭指揮した。予定の三月末までの作業完了をめざし、提出に必要な設計図書作成や関連書類作成、模型作成などを精力的にこなしていった。
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◇ 第10章 青写真

正月三が日はあっという間に過ぎた。四日から会社に出向き仕事した。会社は九日までは休業である。この間は通常会社には入れないが、早川は四日からの仕事をする旨を、予め会社に届けて許可を得ていた。
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◇ 第9章 家族の絆 ②

十二月二十四日、その日の朝は良く晴れていた。アキとリコそれに悟の三人は朝食を済ませてから、イブのパーティーの準備にやたらと忙しかったが、心はルンルン気分であった。悟を交えての初めてのクリスマスイブである。今年は大々的に、両親への感謝を込めたものにしようと話し合っていた。
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◇ 第9章 家族の絆 ①

悟は土曜日の午後三時ころ成田空港に着いた。三時二十五分着のサンフランシスコからの到着便を待った。到着便の待合ホールは混雑していた。国内便と違い国際便は独特の雰囲気がある。もしかしたら、近い将来亜希子と子供連れで、この待合ホールを歩くことになるかもしれないと想像していた。
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◇ 第8章 カップリング

早川は、来年四月の国際設計コンペの締め切りに向かって、猛烈な勢いで作業を進めて行った。五人の増員でさらに推進力が増し作業は遠回りした時間を吸収して順調に推移していった。
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◇ 第7章 弟と妹

次の日の金曜日、十一月も丁度半ばとなり、晩秋の色が濃くなってきた。朝礼後五人の増員スタッフが配属になり、各自挨拶して席に着いた。意外にも早く増員になり、早川は少しばかり驚いた。これで準備は整った。いよいよエンジン全開で突き進める。繁忙を極めるであろう。だが結果は自ずとついて来る。突き進むのみである。
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◇ 第6章 決断 ②

東京駅で手土産を買い、長野県の篠ノ井駅に着いたのは十時少し前であった。日帰りだから身軽だった。初めて降り立ったホームの中央付近で二人の女性が手を振っていた。一人は亜希子と分ったが、亜希子の後ろで、隠れがちに小さく手を振っている女性がいた。亜希子の妹と思われる。
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