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◇ 階数別 > 平屋建・2階建・3階建のコスト比較

建物の階数を違えることによるコストの変動については、意識して語られることは少ない。理由は定かでないが、現実問題としてそれほど必要性がないのかもしれない。
しかし、例えば、同規模の2階建と3階建を考えた場合に、3建の方がコストが高いことは容易に想像できるが、具体的にどのくらいとなると怪しくなってくる。

そこで、このページでは、同じような機能を持つ平屋建、2建、3建のコストのシミュレーションをしてみる。

主として、建物のコスト比重の大きい基礎、木(構造材)、屋根、外装の各工事について、関連する工事項目も含めて比較した。
建物全体のデータは分析データ(2)を参照されたい。

◆ 経済的な設計についての基本的な考え方

はじめに 設計面に於けるコストダウンの要素としては、
◇ 工費的に大きなウエイトを持つ、基礎、木、屋根、外壁の各工事の数量を少なくする。
◇ 構造材積を可能な限り少なくする。
◇ 間仕切り、開口部を極力少なくする。
◇ 不用、無駄な意匠及び材料をなくする。

◇ 有効、適切で効率の良い設備とする。
等が考えられる。

具体的には凹凸の少ない単純にしておおらかなプランとし、建物の高さも基準通りに押さえ、総2矩形の建物とすることと、間仕切りも極力少なくして全体的にのびのびとした設計にすることで実現できると考えられる。

コストは結果であり原因ではない。原因は全て設計にあると言っても過言ではない。

◆ 比較のポイントと問題点

同仕様でほぼ同規模の木造住宅を、平屋建(モデルA)、2階建(モデルB)、3階建(モデルC)の階数別に四つのタイプに分け、それぞれにコスト比較してみた。比較するについての主なポイントは次のようなことです。

まず、考え方として、2階建の建物を基準に考え、これを、平屋にしたときにどのようなコストの動きがあるか、3階建にした時にどの程度のコストが加算されるのかを見ていきます。
そのためには、単に、坪当たりの単価だけをとらえてしまうと、本質を見ることが出来ない。
そこで、そのほかの見方として、
m3当たりの単価や、
柱一本当たりの単価、
間仕切り長さ1m当たりの単価
等を算出することにより、階数による違いが、これらの各単価にどのような形で現れてくるかを見ようというわけです。

また、単に単価そのものだけではなく、実際に、階数の違いにより、どの工事項目がどんなコスト的変化を示すのか、これらが比較する上でのポイントとなります。

工事項目毎の集計金額には、同項目で一番高くついたタイプや、一番安くついたタイプに、●や◎等の印を付けています。
また、全体の工事金額合計に対する、各工事項目毎の割合を出してあります。
参考にしながら読んでいただくと、より深くご理解いただけるのでは思います。

比較する上での問題点もあります。
比較基準を厳格に主張しますと、プランニング(間取り)は全く同じでなければならないことになりますが、これは物理的に無理があること、階数のちがいが起因して発生する新たな考え方や、設計上の機能を無視してまで比較することは、逆にほんとの比較にはならないという、ある種の矛盾があります。
もちろん、全く同一の内容(規模、機能等)にすることは、技術的にはできるでしょう。

が、例えば、開口部の事を考えてみます。
せっかく平屋建てにするのに、2階建てと全く同じ開口部で良いはずはありません。これらをひっくるめて、単純に比較するのはどんなもんかなと言う意見もあるかもしれませんが、単なる数値の比較論よりも、多少の矛盾はあっても、現実に起こり得る形での比較検討の方が、ほんとの意味でのシミュレーションだろうと思われます。

工事項目毎の価格は、それぞれの図面と照らし合わせて、見て頂きますと、これらの問題も良く理解できると思います。

■ 各プラン(間取り)作成のポイント

◆ 平面計画

  • 平屋建の建物
    平屋建の場合、パブリックとプライベートのゾーン分けがまず重要です。

    各室をつなぐ廊下等が長くなり、暗い部屋になりがちです。このプランは、建物を大きく2つに分け、東側はパブリックゾーン、西側はプライベートゾーンにしてあります。

    パブリックゾーンは、
    玄関はひろびろとし、土足のままで和室までいけます。座敷に腰を下ろして来客者との応対や談笑ができます。居間、食堂、台所はワンルームとし、状況により居間と食堂を仕切るようにしてあります。

    プライベートゾーンは、
    手前に子供室、最奥部に寝室を配しております。暗くなりがちな北側は中庭を設けて明るくし、浴室からも裏庭が眺められるようにしました。納戸は予備室的な部屋としても利用できるよう、広くとってあります。

    全体に、すべての部屋が明るく、平屋ならではのゆったりとした間取りにしてあります。

  • 2階建の建物
    プライベートゾーンがそっくり2階になっています。
    1階は平屋とほぼ同じ構成をなし、階段が玄関からのポイントになっています。
    玄関上部は吹抜とし、2階のホールも広々とってあります。どの部屋も明るくのびのびとした間取りにしてあります。
  • 3階建の建物
    1階は、玄関を中心に、東側に居間を、西側に広めの食堂を配してあります。
    玄関から直接居間に行くことが出来、来客者との談笑に利用できます。
    台所は北側のほぼ中央に配し、食堂及び居間との動線がスムーズにいくようにしてあります。

    2階に和室と寝室を設け、洗面所と浴室も2階に配しました。狭い感じのホールを吹抜で補っています。

    3階は子供室2部屋と書斎を設けてあります。また、南側には広々とした、バルコニーを設け、眺望のことと、防災上のことに配慮してあります。

◆ 構造計画・施工計画・法的問題

  • 全タイプ
    建物はまず安全をの観点から、耐震及び防火上の安全性を意識して設計されています。
    後述の、柱の直下率や、間仕切りの直下率、偏心率等がそれです。当然建物の形そのものが、矩形をしていますので構造上はシンプルな計画となっています。

    3階建の場合は、従来の在来工法の構造をイメージすると間違ってしまう。
    軸組と壁枠組との大きな違いはありますが、どちらかというと、2×4工法の構造基準に近いイメージでいた方が無難。法的な基準もかなり厳しくなり、本式の構造計算に基づく最終判断が必要となる。
    特に、基礎の設計は、安易な判断は禁物。

    そして、ここで注意しなければならないことは、
    設計の段階で、法的なことはもちろん、耐震や防火上のことをどんなに充分確認しても、それはあくまで図面上のことであり、現場で図面との照合、チェックが確実に行われて初めて目的が達成されるわけです。
    いわゆる、施工精度の善し悪しが、建物の安全性に直結していると言っても過言ではありません。
    筋違の緊結金物の釘を手抜きすることは、居住する人々を死に追いやる、いわば、殺人行為に等しいと思うべきだと思います。

■ 予想されるコスト変動の要因

建物全体のコストを構成する工事の中で、
基礎工事、木工事、屋根工事、外壁工事の占める割合は、通常の2階建でおよそ55~60%あると言われております。
ですから、この4つの項目にウェイトがかかるような設計は要注意です。特に、階数を変化させた場合、これらに掛かるコストに大きな変動があると予想されます。

分析データ&考察(2)にこの4項目に関連する工事項目に★印をつけてある。参照されたい。

それでは、この4項目の工事を分析し、考察してゆくことにする。下のリンクページをクリック。


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