歩掛見積やドンブリ見積からの脱皮!正しい数量と適正単価から算出される見積書作成の励行の推奨!

◇ 屋根形状 > 寄棟 vs 切妻 vs 片流れ

モデルBの建物(寄棟)を切妻及び片流れに変更した場合に、コストがどう変化するかをみてみよう。
関連する工事項目(外装、板金、屋根、塗装、雑、構造材)のコスト比較をしてみた。

◆ 比較のポイントと問題点

比較するについての主なポイントは次のようなことである。
まず、デザインをどうするかが重要である。屋根コストは屋根形状によって大きく左右されることは想像がつく。
だからと言って平凡でありきたりのデザインでは実際には施主を満足させられない。
シミュレーションの趣旨からいっても多少デザイン化した屋根形状が良かろうと思う。(立面図参照)

屋根形状を変えることによりコストがどう変動すかを見るには、関連する工事項目の数量と価格を全て算出タイプ毎に比較することが一番いい方法である。

ここでは、単に単価そのものけではなく、実際に、屋根形状の違いにより、どの部材がどのように変動するのか、その結果、どの工事項目がどんなコスト的変化を示すのか、これらが比較する上でのポイントとなる。

比較する上での問題点もある。それは先ほど述べたデザインのことである。
比較基準を厳格に主張すると、もっとシンプルな方が良いのかもしれない。迷うところではある。
しかし、現実的に起こりうる、こんなデザイン(立面図参照)で比較した方が、より具体的で納得がいくような気がする。
部材や工事項目毎の価格は、それぞれの図面と照らし合わせて見ていくと、これらの問題も良く理解できると思う。

◆ 予想されるコスト変動の要因

屋根形状が変化する時に変動する工事項目は、外装工事、板金工事、屋根工事、塗装工事、雑工事と構造材である。
したがって、これらの工事項目を構成する各部材が変動するものと思われるので、これらを中心に分析をしてみる。

■ 部材の変動結果とその分析

部材の変動結果とその分析は以下の通りです。

表中の比(%)は寄棟タイプを100とした時の比率である。

◆ 外装工事

外壁面積
2階の軒天端から上部に壁が発生するかしないかによって面積が違ってくる。
切妻タイプも片流れタイプもともに軒天端から上部に壁が発生する。このため比率にして切妻タイプで約7%、片流れタイプで約11%の上昇である。
屋根形状(デザイン)の違いからくるコストの変化がよくわかる。
軒裏面積
切妻タイプが18.1%の増加に対して、片流れタイプは11.1%の増加である。
破風の長さ
切妻タイプの54.3%増に対し、片流れは18.9%増である。
切妻の場合デザイン上妻側の勾配部分の数量がかなり加算されている。
片流れは通常2面の軒部分が、デザイン上3面になっていることに起因している。
外装工事計
切妻、片流れ両タイプとも約12%のコストアップになる。

◆ 板金工事

片流れタイプが約18%ほどコストダウンしているのは、建物の片側だけに樋工事ががあれば良い為である。
逆に、切妻タイプが24.8%ものコストアップになっているのは、主に屋根仕舞用の雨押・捨谷等の数量が極端に多くなっていることに起因している。
デザイン上からくるもので、通常あまり意識しないところであるが、注意が必要である。

◆ 屋根工事

切妻タイプで6.3%、片流れタイプで3.9%のコストアップとなっているのは、屋根面積の差によるもので、デザイン上からくるものである。

◆ 塗装工事

外装工事のところで述べたと同じような理由で、コストに変動がある。特に、破風の長い切妻タイプは31.5%もの価格上昇である。

◆ 構造材

屋根関連材とは、小屋梁、棟木、母屋、隅木、谷木、小屋束、垂木、軒天野縁、雨押え板等を指す。
デザインによって、これらの部材に変動があるわけで、当然コストに変動が生じてくる。

寄棟タイプを100とした時の比率は、切妻タイプで6%のアップ、片流れタイプは3.8%のダウンである。

屋根形状に関するコスト比較を、関連する部材毎に考察してきたが、これらの項目の総合計金額を見てみると、寄棟タイプを100とした時の各タイプの変動率は、切妻タイプで11.3%、片流れタイプで5.6%のそれぞれ価格上昇となる。

屋根形状は、建物全体のデザインに大きく左右するものだけに、重要な要素ではある。

今回の例題でも、もっとシンプルなデザイン(ありきたりの)にすれば、恐らく上記の結果は違ってきたはずである。
デザインをとるか価格をとるかは、ひとつに、施主との折衝の中で決定されることではあるが、デザインとコストのからみを充分意識しておかないと、思わぬ損失を受けることにもなりかねない。


タイトルとURLをコピーしました