語らいの中に輝かしい未来の光を垣間見る時があります!

◇ 映画が彼をナイーブにした

映画鑑賞のスタイル
洋画と邦画 どっちが好き?
洋画・西部劇の魅力
セント・オブ・ウーマン 愛の香り
君は本当はとてもナイーブな好青年だった
吹替えと字幕 どっち派?
オーノー、アイムソーリー

「最近、映画館に足運んだことある?」
「映画館ねえ、そう言えばないなあ。君は?」
「俺も随分と長いこと行ってないなあ。もっぱら家で録画映画だ」
「あの、大画面で大音響は映画館の魅力だけどなあ。」
「デジタルの世界が映画ファンの日常を一変させた感があるな」
「メディア全体が、映像技術の発達と共に大きく変化してしまったよなあ」
「データ保存の技術的進歩も見逃せない。ディスクの大容量化も目を見張る」
「だから、TVなどの好きな映画を保存して、好きな時にじっくり視聴できる」
「映画ファンは家で手軽に楽しめる機会が増えたから、映画館への足が遠のく」
「あの大画面で大音響の魅力よりも、手軽さが当たり前になってしまったんだ」

「とは言っても、封切されたばかりの映画は、やはり映画館でないと見れない」
「だよな、録画して楽しむことが出来るまでには、相当時間待たないと無理」
「確かに、映画館の存在意義はその辺にあるな。旬の映画を見る為に足を運ぶ」
「そうだな、映画館特有の雰囲気はやはり捨てがたいし魅力あるよなあ」

「それは一応置いといて、家で手軽に楽しめる良い方法ってある?」
「テレビを100インチにして、大迫力の音響機器をすれば、映画館並みになる」
「えっ、君の家には100インチのテレビがあるのかい?凄いなあ、金持ちなんだ」
「あはは、金持ち?とんでもない。なりたいけど敢えてなりたいとも思わない」
「じゃ、映画を見たい為に無理して100インチのテレビを買ったという訳?」
「そんなこと一言も言ってないぜ。例えばの話として言ったまでだよ」
「だろうな、俺の聞き間違いだな。納得」
「君も知っての通り、毎日貧乏をレシピしてる家で買える訳ないだろ?……ん?」
「でも、欲しいよなあ。大画面のホームシアタールームで映画をじっくり鑑賞」
「夢みたいな話だな。もう少し安くなったら買うかな。それまで待つとするかな」
「そうだな。10年後かもな。安給料だけど、それまでせっせと蓄えるとするか」

映画鑑賞のスタイル

「ところで聞くけど、君は主にどういうスタイルで映画を鑑賞してるんだい?」
「ん?どういうスタイル?どういうこと?」
「映画を見る方法はいろいろあるだろ?DVDとかテレビとかギャオとかさ」
「あ、そういうことか。そうだなあ、テレビの映画番組を録画して視聴する」
「パソコンでもテレビは見れるけど、当然知ってるよな?」
「もちろん知ってる。だけど、テレビチューナー付きのパソコンじゃないから」
「いや、テレビでHDDに録画した番組をパソコンでも楽しむことは出来るようだぜ」
「ほんとかよ、知らなかった」
「その件は俺も詳しくは知らないから、別の機会にじっくりと語ろうか?」
「だな」
「話を戻して、録画の媒体は?外付けHDD?内蔵HDD?どっち?」
「両方だけど、最近はもっぱら外付けが多いな。満杯になったら追加できるしな」
「だよな、それが一般的かな。俺は内蔵がないから、外付けのHDDだけ」
「先日暇潰しに家電量販店を覗いてみたけど、殆どのテレビが外付けHDDだった」
「なるほど、今やそれが主流になってるってわけか。だろうな」
「最近、大容量のHDDが主流で、価格も大分安くなってきて便利になったよなあ」

「でもさ、テレビを新しく買い換えたら、接続しても映らないから、注意だな」
「あ、そうなんだ。知らなかった。各メーカーで互換できないのかい?」
「詳しい事は分らないけど、俺の経験ではダメだった。同じメーカーだったけどな」
「ということは、これまで保存していた映画がすべてオジャン?見れなくなるんだ」
「そういうことだな。永久保存したいようなお気に入りの映画が見れない」
「テレビの買い替えなんて良くあることだから、メーカーも考えて欲しいよなあ」
「クローズド感覚で商売してるから、そうなるんだと思う。良くないと思う」
「いやそういう事じゃなくて、したくても出来ない技術の問題だよさ」
「ま、それもあるとは思うけど、しかしなあ、『えっ、映らないの?』だよ?」
「あは、その時の顔が見えるようだよ。『残念でしたね』としか言いようがないな」
「全メーカー全機種完全互換OK、なんてした方が良く売れると思うけどなあ」
「それはいくらなんでも無理と思う」
「そうかなあ、何か方法がありそうなもんだけどなあ」
「考えてもみろよ。32インチで録画した映画が100インチでも見れる?無理だな」
「いや、出来ないことはないような気がする。ま、今は期待するしかないか」
「だよな、それに近いぐらいにはして欲しいよなあ」
「そうすれば、買い替えが促進されて、テレビの売れ行きが再び大爆発して」
「各メーカーは大儲けでホクホク?あはは、いつのことやら」

「DVDは?」
「最初の頃はDVDを買ってきたり借りたりしていたけど、最近はない。金がかかる」
「ギャオとかユーチューブは?」
「たまに見ることもあるけど、あの広告が煩わしくてなあ」
「広告収入があって、我々に無償で提供できる仕組みだから、それは仕方ないよ」
「でもなあ、時々肝心な時に突然広告が出て、何だこれはと思うことがあるだろ?」
「あるある。でも、それって、テレビの民放番組も同じことだろ?やたらと広告が」
「その場合は編集で広告部分をカットできるから問題ないさ。君はどうしてるの?」
「俺は徹底してる」
「ほ~、どういう具合に?」
「映画に限って言えば、NHKBSシネマオンリー」
「民放は一切見ない?ほんとかよ」
「もちろん君が言ったように、編集して広告をカットすればいいけど、面倒臭い」
「なるほど、分らないでもないな。民放は広告スポンサーあっての民放だからな」
「それに、時々あれって思うことがあって、何だこれはと、がっかりしたことある」
「へえ~、どいうこと」
「広告を優先してることは分るけど、尻切れトンボになったりするんだよな」
「ああ、それなら俺も経験してる。映画の何たるかを無視されたみたいで頭にくる」
「頭に来ることはないと思うけど、それにしてもテレビ局の良識を疑いたくなる」
「そうだよな、全く。広告主に対する意識が強すぎるきらいが見え見えで嫌な感じ」
「その点、NHKはコマーシャルもないし、完璧に提供してくれるから、好きだなあ」
「うん、言えてる」
「他の番組なら我慢も出来るかもしれないが、映画だけはなあ、俺は嫌だな」
「考えてみたら、サッカーの試合中に広告が入るなんてないのにな」
「そうなんだよ、だから予め中間に10分程度のCMタイムがありますとテロップする」
「そうすれば納得して、映画を見る人も増えて、それなりの効果も期待できる」
「そういう事が予め分かっていれば、おしっこタイムにもできる」
「あはは、なるほど。ちなみに映画館では途中でトイレに行く?」
「あは、それは絶対ない。予め済ませておく。…あれ、家で見る時もそうする?」
「ドウゾ オスキナヨウニ」

「あのさ時代劇とか、色々な専門チャンネルがあるけど、どこかと契約してる?」
「う~ん、悪いけど価値を見いだせない。というより、見る暇がないよな」
「それはいい訳って言うもんだよ、録画して後でじっくり見たらいいだろ?」
「あはは、だな。何故か金払ってでも見たいと思わないんだよなあ」
「毎月の費用はそんなに高いとは思わないけど、だよなあ、対費用効果?」
「嫁さんに聞いたことがあったんだけど、即座に却下された。その給料で?と」
「あはは、生活にゆとりがないと?だけど、時代劇チャンネルは利用したいなあ」
「会社でもっともっと頑張って、給料上げて貰うんだな」
「良く言うよ、今はそれどころがない。いつ首になるか分ったもんじゃないから」
「嘘つけ!君が優秀な管理職だってことくらいは知ってるぞ」
「そんなの関係ないご時世だろ?君も気をつけた方がいいぞ」
「ナルホド コイツ タマニハイイコトヲイイヤガル……フッ」

洋画と邦画 どっちが好き?

「あのさ、ちょっと質問があるんだけどなあ」
「おや、珍しいな君から質問とは。何だい?」
「たまにはいいだろ?……あのな?映画にはいろいろな分類があるだろ」
「えっ、分類?分類ってどういうことだよ。」
「分類って言い方おかしいかな、ま、いいや、洋画とか邦画とかの区分あるだろ?」
「ああ、あるな、外国映画と日本映画のことだな。それがどうした」
「どっちが好みか聞きたかったのさ」
「それは即答できる。洋画。君は?」
「俺は断然、邦画だな。どうして洋画なんだ」
「どうしてって、ただ良く見るのは洋画の方が多い、ということだけだよ」
「邦画には時代劇、洋画には西部劇という分野があるよな。どっちを好んで見る?」
「一般の洋画そのものも良く見るけど、敢えて答えるならやっぱり西部劇だなあ」
「そっかあ、俺とは全然好みが違うなあ?」
「それはそうだろう。女性に対する好みもまるで違うからなあ」
「オイオイここでその話をする?あは、確かに以前から君とは好みが違ってたなあ」
「考え方によっては、好みの違う方がいい場合があるよな」
「そそ、お互いに違った視点から物事を見ることが出来て、それはそれで為になる」
「話が少しそれたみたいだけど」
「女性の話を持ち出すからだよ」
「アハハ、スマン。……で?何だったっけ?」
「君は西部劇が好きだってこと」
「あ、だった。君は当然時代劇だな?」
「うん、時代劇が一番だな」

「確かにいいよなあ」
「おや?君は西部劇のファンじゃなかったのか」
「もちろんそうだけど、ちょい前までは時代劇三昧だったんだ」
「お、そうだったんだ。それがどうして裏切ったんだ?」
「あは、裏切ったはないだろう。もうこれといって見る映画がなくなってしまって」
「えっ、そうか、なるほど時代劇に入れ込んでたってことか?」
「そうだな、明けても暮れても時代劇。君は今そうなのかな?」
「そそ、そうなんだよ」
「君から見て、時代劇が君を引き付けて離さない魅力って何だろうな」
「今の時代から余りにもかけ離れているから、いわゆる娯楽として安心して見れる」
「なるほど、それはあるなあ、分る」
「それに今の殺伐とした世の中で生活していると、純粋に生きる事の難しさがあり」
「時代劇から、ある意味教えられることが多いとか?」
「だよなあ、武士であろうと農民であろうと、商人であろうと、それぞれの立場で」
「人生の悲哀を感じたり悩みとかがあって、今と同じだなあと身近に感じたりして」
「むしろ今よりも、そういう事に対する、すっきりした解決策があったりしてな」
「どうせ映画だからと思えない、考えさせられるようなことが良くあるよなあ」
「こういう言い方すると、生意気だと言われるかもしれないけれど」

「ん?」
「今の日本人が失いかけてる、いやもうとっくに失ってるかもしれない日本人の心」
「言いたいことは良く分る。その事は俺も映画を見ながら痛切に思うことがある」
「もちろん、昔に戻ることは無理だけど、出来る事ならその点にフォーカスして」
「も一度日本人らしさを取り戻せたらと言いたいのだな?うん、まったく同感だな」
「時代劇は斬った張っただけのイメージが強いが、実はそうでもないって事だよな」
「だな、全てがそうだとは思えないけど」
「うん」
「監督や脚本家が映画を通して本当に伝えたい事は、正にその事だと思いたいね」
「同感だな」
「例外を除いて映画全般に言えると思うけど、映画ってある意味教育的って言うか」
「うんうん、道徳心とか人情とかの人生に於ける人の道を説いてる、教えてると?」
「そうなんだ、下手な教育家や学者が説くより、はるかに効果的だったりしてな?」
「全く同感だな」

洋画・西部劇の魅力

「西部劇は見ない?」
「いや、たまに見る。ジョン・ウェイン主演の西部劇だけだけどな」
「ほ~、ジョン・ウェインが好きなんだ」
「何だか訳もなく好きなんだよなあ。何度見てもいいね。君の好きな俳優は?」
「西部劇も含めた洋画全般で言うと、数えきれない位いっぱいいるなあ」
「例えば?」
「マット・デイモンだろ?アル・パチーノ、ラッセル・クロウとか切りがない」
「俺はジョン・ウェインが好きだけど、君はジョン・ウェインは?」
「いいねえ、あの独特の歩き姿は印象的だな。遠くにいてもすぐ分る」
「いやいや、恐れ入りました。愚問でした。で、一番手は?」
「一番手は何と言ったってクリント・イーストウッドだな」
「クリント・イーストウッドのどこに魅力を感ずるんだい?」
「どこって、聞くだけ野暮ってもんだよ。もう、全てに魅力がある。好きだなあ!」
「オイオイ、まるで女性を口説くときのセリフに似てないか?」
「そう言われても否定しない。男として惚れ惚れする俳優だな」
「おっと、もしかしたら君は……」
「あは何を言うんだ。そんな趣味はない。男の中の男。あえて邦画で言えば高倉健」
「それなら分る。高倉健はいいなあ。で、イーストウッドの作品で好きな作品は?」
「西部劇だと、許されざる者、夕日のガンマン、荒野の用心棒、アウトローかな」
「西部劇以外だと?」
「ダーティー・ハリー、マディソン郡の橋、ハドソン川の奇跡、ブラッド・ワーク」
「うん」
「その他はミリオンダラー・ベイビーとかグラン・トリノもいいねえ。切りがない」
「好きな作品の中で何が一番?」
「一番手は西部劇の『アウトロー』だろうな。何度見てもいい。限りなくいい」
「アハ、これだもんな。その目の輝きようったら、その手で女性も?」
「お前は全く……。なんでそういう話になるんだよ。せっかく悦に入ってるのに」
「『アウトロー』のどの辺がいいのか、何かある」
「あるある、いっぱいあるけど、その中から君の感想を聞きたいシーンがある」
「へえ~、どんなシーンだよ」

C:ジョージー役がクリント・イーストウッド
S:ローラ役がソンドラ・ロック
S:雲って空色の心に浮かぶ夢みたい
C:考えもしなかった

「あの有名なサンドラ・ブロックも綺麗で好きな女優だけど」
「うん」
「この映画に出演してるソンドラ・ロックもいいねえ。好きだなあ」
「名前が似てないかい?」
「似てる似てる。この女優さんは、イーストウッドとの共演が結構多いよな」
「お、そうなんだ、イーストウッドが好きなタイプの女優さんなのかもな」
「そうかもな。あの女優さんだったら、誰もが好きになるほど魅力的だな」
「ところで、さっき俺に感想聞きたいとか言わなかったたっけ」
「ウン、あのな?ローラが言ったセリフのことをどう思うかなと思って」
「『雲って空色の心に浮かぶ夢みたい』と言うところ?」
「そう、どう?良いフレーズと思わない?」
「う~ん、悪いとは思わないけど、俺はこの手の解釈は苦手だからなあ」
「もちろん映画のシーンの流れを見ないと、解釈しにくい面もあると思うけど」
「何だかフワフワとした感じの響きがあるけど、その程度だなあ」
「うん、分った。俺は最初このセリフがいまいち良く理解できなかったんだよ」
「うんうん、そう思う」

「ところが、何度も何度も見たり、メモしたりしているうちに、理解できた」
「へえ~」
「何となくだけどな。セリフの言わんとしてることが少しづつ分ってきた」
「だけど、君が言うほど大袈裟に言うほどじゃないような気もするけどなあ」
「ナヌ?どうでもいいセリフだって言うのか?」
「いや、そこまでは言わないけど、近い」
「ったく、このセリフには女心の切なさみたいなものが隠されていると思うんだ」
「女心の切なさ?あ、それだったら、俺には無理だ。理解不能」
「あきれた。雲って消えては現れ、現れては消える。だろ?夢だってそうだろ?」
「おお~、凄い!なるほど」
「ロマンチックだし、純粋な心が伝わってこないか?ある意味現実的だし」
「いいね、いいねえ、なるほどいいねえ。じゃ、空色の心って?」
「何も飾り気のない純粋な心って解釈できないか?」
「この私の純粋な気持ちを受け取って欲しい!私の夢を叶えて欲しい!と?」
「いや、このシーンの段階では、まだそこまではないと思うけど」
「それでも、ローラはそれとなくジョージーに何かを伝えたかった?という解釈?」
「ま、解釈は人それぞれだろうけど、映画ってそうしてみると楽しいだろ?」

「うんうん、何だか為になった。君は立派な通訳士だな」
「通訳士?」
「俺みたいな詩の心も分らないボンクラに、分かり易く解説してくれる通訳士」
「ん?それを言うなら、分かり易くひも解いて説明してくれる解説者だろ?」
「そういう言い方もあるな」
「考えるに、英語の分らない人に対し、どう翻訳するかが、とても重要と思う」
「それだけに、翻訳家の存在って大きんだ。どの翻訳家が良いみたいなことは?」
「多少あるよな」
「そうなんだ」
「英語が得意でない俺でも、時々明らかに意訳しすぎだと思うことがある。ない?」
「意訳ってどういう意味?」
「原文にとらわれず、全体の意味やニュアンスをくみとって翻訳することだよ」
「そんなの考えた事もない。映画なんて要は楽しめばいいんだし、そこまでは」
「あは、そうだな、考え過ぎだな。翻訳のプロが翻訳してる訳だからな」
「言わんとしてることは分らないでもないけど、君の悪い癖だ、もっと素直になれ」
「アハハ、一本取られたな。確かにな、以後気をつけます」
「あ~あ、その言葉、何回聞けば治まるんだろうな」
「ハイ オサマルマデデス」

セント・オブ・ウーマン 愛の香り

「ところで、さっき良く見るのは洋画の方が多いと言ったけど、西部劇以外では?」
「イーストウッドの好きな作品はさっき言ったよな?それ以外でってことかな?」
「そそ、色々ありそうだけど、この映画はぜひ見て欲しいなんてのある?」
「う~ん、いっぱあるけど、……あ、そうそう、拾い物の映画を紹介しようかな?」
「拾い物の映画?」
「うっかり、永久に見損じてしまうとこだった。」
「どういうこと?」
「毎日のことだけど、録画したい映画はテレビの番組表から探すだろ?」
「ま、そうだな」
「初めて見る映画の場合、タイトルと説明を頼りに録画するかどうかを決める」
「ま、そうだよな」
「だから、ま、『この映画は興味ないなあ録画は止めとこう』と思う映画もある」
「ま、そうだよな」
「紹介したい映画も、このたぐいの映画だったんだよ」
「録画するの止めとこうと思った?映画のタイトルは?」
「アル・パチーノ主演のセント・オブ・ウーマン 愛の香り」
「へえ~、聞いたことないなあ。どんな映画だい?」
「俺の下手な説明よりも、ま、見れば分る。凄い映画だよ」
「何が凄いわけ?」
「アル・パチーノって俳優が、これほどまでに名演技が出来るなんて、規格外」
「へえ~、そうなんだ」
「さすが、アカデミー主演男優賞を受賞するだけのことはある」
「だから、その映画の何が凄いわけ?」
「凄いと感ずるかどうかは、人それぞれだと思うから、ま、見たら分るとしか」
「言いようがない?なるほど、それ程までに言うなら一度見てみることにするか」
「是非見て欲しい。そして後で感想も聞きたいな」
「あい、分った。今日にでも早速レンタル屋に行くかな。あればいいけど」
「だから今は、見損じた映画で珠玉の輝きのある映画を探してるんだよ」
「そっかー、さすが映画マニアだ。恐れ入りました」

君は本当はとてもナイーブな好青年だった


「時代劇以外の邦画で、特に好きな監督っている?」
「俺にとって、それは何たって山田洋次監督だろうな」
「映画によって違うとは思うけど、山田洋次監督の作品のどこに引かれる?」
「全体に庶民的な風情を描いてて、その中に奥深い人情の綾を丹念に描いてる」
「時には涙し、時には笑いがあったりして、典型的な日本映画だな」
「映画を見ながら泣いたりする?」
「うん、良く泣くよ」
「えっ、嘘だろ?いつもクールな君が映画を見て泣くなんて、とても信じられない」
「君は俺の表面上の事しか見てないようだな。このナイーブな俺が分ってない」
「君がナイーブ?どこからその言葉が出るんだよ」
「口からしか出せない」
「あは、じゃ君がナイーブだと認めたとしてだ、例えばどんな場面で涙する訳?」
「それは決まってるだろ?もちろん悲しい場面もあるけど、他にもいろいろあるさ」
「自分の過去の出来事と重なったりして、思い出して泣くとかある?」
「あるある、その他にも人間として、心から優しくされるような場面は泣けるなあ」
「遠い田舎の、母親とか父親とか兄弟のことを思い出して、泣いてしまうとか」
「うん、ある。特に俺は親孝行してないし、いつもゴメンという気持ちがあるから」
「映画のシーンに似たような場面が出てくると、思わず泣けてしまう?」
「んだ、そうだべさ、あれ?」

「寅さんを見て泣くことある?」
「あるある、あの映画は、イメージとしては笑いの映画と思うかもしれないけど」
「うん」
「天下一品の泣かせる映画だよ。そこが山田監督の真骨頂だと思うけどな」
「……」
「もちろん、全編に笑いをちりばめてはいるけど、その笑いの中に何とも言えない」
「うん」
「人の心の奥底に潜む機微を余すことなく表現してる。下町という舞台もいいしな」
「……」
「この映画は、正真正銘の超真面目な映画だと俺は思ってるよ」
「へえ~、君の口からそんな話が飛び出すなんて、思ってもみなかった」
「お前は、親友だという割には、まだ俺の百分の一も理解してないようだな」
「驚いたなあ、君がほんとはとてもナイーブな好青年だったなんて」
「この際俺という人間を良く観察し、表に出ない俺の奥の深い所を見ることだな」
「ウァオ、うんうん。ナヌ?…オイオイ、言葉にならない。何か変なのが出てきそう」
「オアトガヨロシイヨウデ」

吹替えと字幕 どっち派?

「洋画で台詞の音声を声優が日本語に差し替える、つまり吹替えのことだけど」
「うん」
「どう思う?」
「どう思うって普通だろ?外国語がさっぱりの俺には、吹替えて貰わないと困る」
「ということは君はもっぱら吹替えオンリー?字幕だけの映画は見ない?」
「いや、そんなことないよ。字幕だけの映画も良く見る。こだわりはない」
「へえ~、そうなんだ。吹替えに対する抵抗はない?」
「抵抗?言ってる意味が分らない。どういうことだ?」
「いや、分らなければいいんだ。人それぞれだから、どうのこうのはないんだけど」
「何か奥歯に物が挟まったような言い方だな。何か言いたいことがありそうだな」
「声優さんには悪いけど、俺は映画の吹替え版は一切見ない。字幕映画のみ」
「ほんとかよ。どうしてさ」
「いや、単にスター俳優の声を聞きたいだけの話なんだよ」
「なるほど」
「好きなクリント・イーストウッドの声を、他の人が代わりに言うなんて嫌だな」
「確かに、そういう面はあるな。言ってることは良く分る」
「舞台とか映画とかは、本来俳優の熱演に拍手喝采し、一体感を感ずるところに」
「特有の魅力があると言いたいんだな?」
「どんなに吹替えの上手な声優さんでも、何て言うかなあ、妙に距離感を感ずる」

「だけど、吹替えも、それなりの良さがあると思うよ」
「うん、それは理解してる。例えばテレビ画面が小さいと字幕では見辛いとか」
「台詞がやたらと長く多くて、字幕を読むのに目が追い付かない」
「吹替えの場合は、日本語がダイレクトに耳に入ってくる訳だから、分かり易い」
「問題は声優さんの力量だな。経験不足、力不足があると魅力が半減してしまう」
「うんうん、それはあるよなあ。途端に見たくなくなる。スイッチを切ってしまう」
「そんなことさえなければ、吹替え版もそれなりに悪くはない」

「最近は、吹替えた上に、字幕でも楽しめるなんて言うのもあるよな」
「うんうん、あるある。そこまでいくと首をかしげたくなるけど、利点もある」
「どういう利点?」
「吹替えの好きな人で、難聴の人にとっては、凄く有り難い事じゃないかなあ」
「あ、なるほどな。高齢になると難聴になる人が多いというからなあ。なるほど」
「テレビ局も時代の要請に合わせて、それなりにいろいろ工夫してるのが分るよな」
「こんなこと聞いたことない?最近は吹替え版が増えているとかっていうの」
「うんうん、聞いたことある。やっぱり文字を追いかけるのが面倒なのかなあ」
「それはあるかも」
「でもやっぱり俺は字幕派だな。映画は絶対スター俳優の声を聞きながら見なきゃ」
「あはは、映画の意味がない?分った分った」

「唯一例外はあるけどな」
「ほ~、例外ねえ~。何だい?」
「刑事コロンボ」
「お~、ピーター・フォーク。好きなんだな?」
「吹替えの拒否反応を超越してる。ストーリーが抜群に面白いし適当に短時間」
「適当に短時間?」
「うん、全作品共だいたいが1時間ちょい程度。だからいい」
「これって、日本語の字幕も対応してるんじゃなかったっけ?」
「そそ、字幕にもできる。声優の吹替えのセリフが字幕される」
「すっかりお気に入りのようで、話しぶりに熱が入ってる」
「あはは、まるで恋人の話をしてる感覚だな」
「なるほどなあ、吹替え嫌いが、コロンボに逮捕されたって訳だ」
「逮捕の理由は?」
「吹替え侮辱罪」
「コロンボノフォークデ グサット ササレタカンジ デス」

「あのさ、提案があるんだけど」
「提案?なに?」
「映画の話をもっとしたいなあと思ってさ」
「お~、そうだなあ。もっと掘り下げて話するのもいいかも」
「深掘りすることで、映画の新たな魅力を発見できるかも」
「深く堀過ぎて、穴から出られなくなったらどうする?」
「当然助けてくれるよな?」
「さあどうかな、君のSOSの叫び声も聞いてみたい。あは、面白い」
「何で話が横道に飛ぶんだよ。真面目に話しろよ」

「その前にちょっと聞くけど、君がナイーブになったのは映画のお蔭?」
「ん?急にまた、……考えた事ないけど、……意外と当たってるかも、……うん」
「きっとそうだよ、そうとしか考えられない」
「また何か言いたそうだけど、そんな事どうでもいいだろ?」
「いや、どうでもよくない。余りにも予想外だったからなあ」
「俺がナイーブだという事に、どうしてそんなにこだわるんだよ」
「あは、ゴメン、だな、どうして俺はこうなんだろう」
「ほんとにお前の悪い癖だよなあ。たまに疲れることがあることぐらい察しろよ」
「はい分りました。以後気をつけます」
「あは、これだからなあ、ほんとに困った男だ」

オーノー、アイムソーリー

「もしかしたら、俺の脳の中の一部のネジが緩んでるか、外れてるかもな」
「もしかしなくても間違いなく外れてる」
「一本ぐらい外れてても大丈夫だろう」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ」
「ん?」
「機械でネジが一個緩むと、次々と周りのネジまで緩んでしまう事もあるだろ?」
「何?じゃ俺の脳のねじが、全部外れてしまう可能性があるって言うのかい?」
「そう、だから早いうちに病院に行った方がいいよ。とんでもない事になるよ」
「病院は脳外科?」
「だな、そこで脳のネジを、ドライバーで締め付けて貰った方がいいよ」
「えっ、ドライバーで?」
「うん、ドライバーでしか締め付けられないだろ?それとも電動でやるかな?」
「えっ、脳だよ?どうやって締め付けるんだ?」
「俺を担当の医者だと思ってくれ。詳しく説明するから」
「オイオイ正気かよ!お前が医者?冗談じゃないよ。死んでしまう」
「脳全体のネジが全部外れる思いをしたら、そのくらい辛抱しなよ」
「髪の毛は剃り落す?」
「それはそうだろう、当たり前だ。丸坊主になる」
「うん、で、どうやって締め付けるんだ?ネジを」
「ついこの間までは丸鋸で頭蓋骨をギリギリとカットして行って、パカッと開く」
「丸鋸って、あの大工が使ってるやつかい?」
「医療用の場合、丸鋸じゃなくてアイムカッターと言って、骨カット専用に使う」
「ええ~、痛くないかい?」
「さあどうかなあ、された事ないから分らないけど、多少は痛いかもな」
「多少かい?相当痛いんじゃないかなあ。麻酔かけるんだろ」
「高級なアイムカッターだと、カッターに麻酔薬がしみこませてあって」
「……」
「カットしながら麻酔が掛って行くから心配ないけど」
「けど?」
「当病院では予算の関係で、高級品じゃなくて通常のカッターしかない」
「嘘だろう?麻酔かけないでやるのかい?」
「脳に麻酔をかけると危険だから、掛けない。それより、失神してその必要ない」
「ゲッ!……ウン分った。最近の締め付け方法は?」
「まず脳の画像分析をして、ネジがどこにあるかを判断して数カ所に小さな穴を」
「開けてモニターを見ながら遠隔操作でネジを締め付ける。最近の最先端技術だな」
「そうだな」
「じゃその最先端技術で施術してくれるんだな?」
「残念ながら、当院では旧式のアイムカッターしか設備していない」
「オイオイ、俺の脳だからって適当なこと言うなよ。や~めた他の病院に行く」
「オーノー、アイムソーリー」

「これは嬉しいことかもなあ。俺の脳もだんだん君の脳にに似てきたのかもなあ」
「コラ、言う事に事欠いて、いい加減なこと言うな。で、俺の提案はどうなんだ?」
「おっと、そうだったな。機会があったら、今日の続きという事で、どう?」
「うん、いいね、いつになるか分らないけど、続編やろうよ」
「今度は、誰か女性も交えて話すると、もっと楽しいかも」
「いいね、いいね。是非そうしよう」
「キミハ ホント イイヤツダヨ サンキュ」

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