「トンネルの周辺って、鳩が多く住みついてると思わない?」
「うん、そんな気がするね。トンネルの構造に関係してるのかな」
「鳩のせいで交通事故に遭っちゃったの」
「えっ どういうこと?鳩と衝突したの?」
「そうじゃないの。追突」
「追突?鳩に追突されたの?」
「バカねえ、なわけないでしょ?」
「ハハハ、だよね。じゃ、どういうこと?」
「トンネルの出口付近で信号待ちしてたら、後ろからドスン」
「あ、そうなんだ」
「前から3台目だったけど、前の車にぶつからなくて幸いだったわ」
「で、相手は?」
「私と同じで、若い女性で綺麗な人だった」
「一言多くない?」
「どういうことよ」
「アハ、ゴメン。何でもない。で、よそ見してたのかな、その女の子」
「それが、聞いてよ。バカみたいな話よ」
「さっきからやたらと鳩の話してたけど、関係あり?」
「大ありのコンコンチキよ」
「トンネルの出入り口辺りは、やたらと鳩が多いからなあ」
「そうなの、それで」
「あ、鳩の糞が落ちて来て、びっくりしてブレーキを踏まなかった」
「で、ドスン? そして私がフン慨した? アハ ブー、違う」
「鳩が急に眼の前から飛びたったから、びっくりしてブレーキを踏まなかった」
「で、ハートがドキドキしてドスン?と言いたいの? ブー、違う」
「ダジャレ連発か。……違う?じゃ何だろうか」
「実は私も目にしてハンドルを切って、何とか切り抜けたけどね」
「ハハー、と言うことは、道路を鳩が歩いてた。そうだね?ピンポーンだろ?」
「近いけど、ブーー」
「……う~ん」
「ハトの死骸が横たわってたの」
「あ、そうなんだ」
「その女の子に聞いたら、びっくりしてハンドルを切りそこなった上に」
「ブレーキを踏むのが遅くなって、ドスンか。アハハハ」
「もう、笑い事じゃないわよ」
「あは、ごめんごめん」
「警察が来て現場検分って言うの?お蔭で会社に遅れてしまったのよ」
「ハトの死骸を見て、ハッとしてブレーキを踏みそこなった。あは、面白い」
「何よ、ダジャレを言ってる場合?こちらの身にもなってよ」
「だね、で、どうもなかったの?首は」
「えっ、どういうこと?会社を首になったかって?」
「まさか、違うよ、ムチウチ」
「ああ、そういうこと。フフ、面白い人ね」
「ありがとうと言いたいところだけど、君の勘違いも甚だしいね」
「警察官が言うには」
「うん」
「良く前の車にぶつからなかったね、って褒められたよ」
「おおー、そう言えばそうだね。停車中はサイドブレ-キを引いてるの?まさかね」
「私は、停車してても、ルームミラーを通して、いつも後を見る癖があるの」
「そっかー、感じたんだ」
「そう、とっさに後方からの車がぶつかると判断して、ブレーキを強く踏んだの」
「ほー、たいしたもんだ。凄い判断力だね」
「どう、えらいでしょ?……惚れ直した?」
「あは、今それを言うか? ……だね。……ウン。そういうことにしといて」
「これだからね、もう」
「ところで、鳩の死因は何だったんだろうか?あ、そうか、車に引かれたんだ」
「知らないわよそんなこと。多分見ていた鳩がいたと思うから、聞いてみたら?」
「鳩に?ちゃんと話してくれるかなあ」
「さあ、人間の言葉を話せる鳩が一羽くらいいるんじゃない」
「そうか、だね。警察に捜索願を出して、探してもらおうか」
「フフフ …… バ~カ」
▼ 自動停止する機能のこんなアイディア
「追突防止用に、最近の車は自動停止する機能が付いている車もあるよね」
「あ、そうそう。とても便利な機能よね。でも……」
「でも何?」
「自分の車の場合はだけど、後ろから来る車にそんな機能が付いてるかどうか」
「おおー、そうだよね、全車種にとなると、あと何年も後の事になるみたいだね」
「いっそのこと、ぶつかると思った時、前の車からも後ろの車を制御できたら」
「おお~、なるほど、なるほど。自動的に制御してくれる?」
「そう」
「だけど、ちと問題ありだね」
「どうして?」
「他人のパソコンを遠隔操作してるみたいで嫌じゃない?」
「あ、なるほどね、言えてる。でも、追突に限定したら?」
「うんうん、なるほど、でも、君にしてはいい考えだね。今日は冴えてるね」
「君にしてはは余計、君は何時もでしょ?それに、今日もでしょ?」
「あ~あ、いつも君に制御されてる感じだなあ」
「はい、これが今売出し中の次世代型の制御システムです。ハイ」
「あはは、得意げになってる」
▼ 自動運転機能付の車がハッカーされた
「あ、今、恐ろしいことを想像してしまった」
「エッ、恐ろしい事?」
「そう。あのね、さっきパソコンの話が出たけど」
「遠隔操作?」
「うん。車の自動運転機能って、全てプログラムで動いてるんでしょ?」
「もちろんそうだと思うけど、それがどうかしたの?」
「ハッカーに侵入されて、コントロールされたらどうなるかしら」
「おっ、お~~、大事故になるように操作できる?映画に出てきそうな話だね」
「あり得ない話じゃないような気がして、恐ろしいと思ったの」
「その辺は自動車メーカーが想定して、ちゃんと考えてるとは思うけどね」
「そうかしらね、だといいけど」
「いやあ~、ほんと今日は冴えまくってるね。恐れ入りました」
「フン、いつものことよ、大したことないわよ。……アラ、……言ってしまった」
「もうこの話これくらいにしない?どこかでお茶しない?」
「あら、気が利くわね。私もそう思ってたの」
「アハ、珍しく同じ考えだ。で、何飲みたいの?」
「はと麦茶」
「ナヌ……、そうきたか」
「でも、はと麦茶って、あるかしら」
「あ、あるよ。この辺じゃ一軒だけあるよ」
「ヘエーあるんだ。店の名前なんて言うの?」
「平和、ピース。はと麦茶しかメニューにないよ」
「嘘だあ、それじゃ売上あるわけないじゃん」
「それが驚くなかれ大繁盛さ。今から行っても座るところないかも」
「えっ、ほんとなの?」
「看板の店名の下に『平和を愛する人しか入店できません』と書いてあるよ」
「店の前を素通りしたら、平和を愛してないと烙印されてしまう?」
「だから、嫌でも入店してしまう」
「あはは、良く出来た話だけど、口から出まかせも、いい加減にしない?」
「アハ、……バレタカ」