語らいの中に輝かしい未来の光を垣間見る時があります
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◆ 無灯火の悲劇



「君さ トンネル内を走行中、車のライトは点灯してるかい?」
「当たり前でしょ?うっかり忘れ以外は大体はね、どうかした?」

「何とも痛ましい事故見ちゃったんだよ!」


あ~… トンネル内の地獄絵

「エエッ ほんと どんな事故だったの?」
「俺も危うく巻き込まれそうになったんだよ 怖かったなあ」
「えっ そうなの? じゃあ 目の前で起きた事故?」
「そうなんだよ 俺が車間距離を長く取るの君も知ってるよね」
「そうね 後ろからクラクション鳴らされる時がある位だものね」
「あの事故に遭遇した時ほど車間距離の大切さを感じた時はなかったよ」
「うん で どんな事故だったの?」
「メモ紙持ってる?」
「あるわよ。はい」

「うん。イラストで説明するとこうなる」
「上手とは言えないけど、分り易いわね」
「アハッ、で、俺の車は30m位手前を走行中」

「まあ、随分手前ね」
「命を守る距離だね。で、前の普通車の少し前をバイクが走っていた」
「よくある光景ね」
「対向車は黒い軽自動車だったけど、それが無灯火だったんだ」
「それも最近良く見る光景ね。薄暗いトンネルで無灯火?」
「だよな、ほんとに良く見るよな。どういう心境何だろうか」
「バッテリーが上がるの心配してるのかしら」
「う~ん、そうかなあ、分らない。理解しがたい」
「黒い車が無灯火?見づらいわね」
「そうなんだよ、俺はいつも、とても危険な行為だと思っていたんだ」
「うんうん、分る」
「俺の悪い予感が、この時的中してしまうなんて思いもよらなかったよ」
「……」

「バイクのすぐ後ろを走っていた車が、イライラしている様子だった」
「前を走ってるバイクがノロノロ?」
「そうなんだよ。だからイラついていたんだな、きっと」
「まさか、バイクを追い越そうとしたわけ?」
「そのまさかだよ。その通り」
「エエッ、嘘でしょう?対向車がいたんでしょう?あり得ない」
「そう、あり得ないことが起きたのさ。一瞬の出来事だった」
「まあ、恐ろしい」
「多分、前方から走ってくる黒い無灯火の対向車が見えなかったんだ」
「イライラしてるから余計に注意散漫だしね」
「そうそう。対向車と正面衝突。後は説明するまでもないよね」
「まあ、想像しただけでもゾッとする光景だわね」
「俺は瞬間的にブレーキを掛けたけど、それでも相当進んでしまって」
「……」
「まさに間一髪だったね」
「……」
「一瞬の事で無我夢中だった。衝突する凄まじい音と同時に」
「……」
「俺の後方の車や前方の車の急ブレーキのキキーとなる音などの」
「……」
「不気味な音がトンネル中に鳴り響き、耳をつんざき」
「……」

「心臓が止まりそうだったよ。生きた心地しなかったよ」
「薄暗く狭いトンネル内の事故だから、まさに地獄絵?」
「地獄に行ったことないから分らないけど、凄まじい光景だった」
「… …ガソリンに引火したとかはなかったの?」
「幸いにもなかった。もし、そうなってたら大惨事になっていたと思う」
「トンネル内だものね。想像しただけでも身震いがするわね」
「もしかしたら、天国からしか君を見つめられなかったかもね」
「………そうね………そうだわね……。ああ、生きてて良かったわ。ほんとに」
「後で分った事だけど、バイクに乗っていた人も巻き添えになったらしい」
「えっ、死んだの?」
「らしい。6人全員死亡したみたいだね。」
「6人?」
「対向車の軽自動車には、子供を含めて家族4人が乗っていたみたいだよ」
「えっ、そうなの?……まあ、……そうなんだ。………ナンテコトヨ、……カワイソー……」
「……二度と見たくない光景だった」
「車は走る凶器というけど、ほんとね。怖いわね」
「全くだね。今まで経験したことのない、事故現場を実際に眼の当りにすると」
「……」
「あれは、まさに拳銃と同じだね。走る殺人マシンとも言えるね」
「ほんと、そうだわね」
「お互い気をつけなくっちゃね」


運転者の性格も起因 命と引き換えの運転

「それにしても、バイクを追い越してまで急ぐ必要があったのかしら」
「そこなんだよ。命と引き換えじゃ、余りにも……」
「そうよね」
「事故を起こすのは、運転者の性格も起因しているような気がするね」
「短気だとか、のんびり屋さんとか、慎重な人とか?」
「ウン、それもあると思うけど、変に粋がってる奴がいるからね」
「無灯火もそうなの?」
「うん、一概には言えないけど、何となくそんな気がしないでもないよね」
「何でそう思うの?」
「理由なんてないけど、それしか言いようがないような気がするんだよね」
「うん言えてるかも。『点灯?見えるのに何で点灯?アホらし』って思ってる?」
「あおり運転も似てる気がするね。人の事は考えない自己中で変に粋がって」
「あ、そうか、最近問題になってるあおり運転ねえ。うんうん、そう思う」
「法律で規制するようになったけど、そうしなければならない程、人の心がねえ」
「確かに問題だわね」


トンネル内で何故点灯しなければならないか

「このトンネル内の事故の第一の原因は、バイクを追い越そうとした車だよね」
「うん、うん」
「でも、無灯火で走っていた車にも同等の責任は大いにあると思うよ」
「そうね。もしライトをつけてたら、事故にはならなかったかもしれないものね」
「考えてもごらんよ。トンネル内で何故点灯しなければならないかを」
「私は此処に居るよ、ぶつけないでね。という事でしょ?」
「うん、だから、無灯火で走るってことは」
「うん」
「どうぞ、『ぶつけて私を殺して下さい』と言っているようなもんだよ」
「そこまではないにしても、似たようなことよね。自殺行為には間違いないわね」
「家族を乗せて無灯火で走り、全員が死ぬなんて、余りにもむごいことだよね」
「ほんとにそう思う。言葉にならないわね」


某自動車学校で実験したデータの意味

「こんなこと知ってる?」
「どんなこと?」
「ある自動車学校で実験したデータらしいけど」
「うん」
「市街地で、2台の車を同時に出発させて、同じ道を決まった距離だけ走らせ」
「うん」
「一台は法定速度で、もう一台は法定速度を無視して走る」
「エッ、信号も無視?」
「アハ、いくらなんでもそれは危険すぎるよ。速度だけでもどうかと思うのに」
「そうよね、でも、それって、いくら実験でも警察が黙っていないでしょう?」
「もちろん、警察に事前の許可を得て、警察官立会いのもとでやったんだよ」
「なるほど、それなら理解出来る。で、結果は?」
「目的地までの距離は覚えてないけど、相当な距離設定だったみたいだよ」
「うん、うん、で?」
「結論は、二台の車の到着した時間の差が5分もなかったみたいだよ」
「市街地は信号も多いし、信号では必ず停車する訳だしね。そんなものかもね」
「だから、わかる?」
「うんうん、わかるわかる。とっても含蓄のある教訓ね」
「命の尊さを考えるなら、車を運転する人は、肝に銘じておくべき教訓かもね」

「トンネルでの事故と言えば私にもあるわ」
「ああ、この前の話だね。追突された、あれだろ?」
「そうなの、お粗末な話ね」
「ハハハ、みんなに教えてあげたら?」
「そうよね。コチラ を見てね」


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