◇ 第2話 美への衝動 その日は、朝から雲の多い日でした。窓から見えるはるか遠くには、濃い灰色の雲の下に白みがかった薄緑の山が横たわっていました。客はランチタイムの過ぎた時間帯にしては結構な賑わいです。 しばらくして、女店員のしなやかに伸びた白い手が、注文していた珈琲を楕円の形をしたアンティークなテーブルに置きました。テーブルの色彩と洒落た器の中で、出窓からの明かりを帯び揺れている液体の色が、わずかに立つ湯けむりの中で、私に微笑みかけているように見えました。 天使の翼をあなたに
◇ まえがき 人間、一生の間にはいろいろな出来事に遭遇いたします。その為に、思わぬこととなり、場合によっては命をも失ってしまうことすらあります。これは正に運命とか宿命としか言いようのない悲しい出来事ですが、他方では、天にも昇るような幸せを味わうなどの喜ばしい出来事もあります。 天使の翼をあなたに