あは! まさか。そんなことがあるはずがない。何かの錯覚なのだ。でなければ幻想だ。私は何度も目をこすり、女神を見続けましたが、女神は相変わらず手招きをしています。
これは信じがたいが、現実なのだ!一瞬のことでした。それはまるで、この世のものとは思われない不思議な力と得体の知れない感覚が私の身体中を駆け巡るような感じでした。もはや私の身体は私でなくなったような気がします。この後のことを正確に描写する自信はありませんが、こんな感じです。
私は、この現実を確かめる必要に駆られました。急ぎ女店員に少しの間外に出ることを告げて、店のドアから外に出ました。2歩3歩、駐車場の砂利を踏む音が、私の感覚の外側に逃げていきます。そして、その場に立ちつくし、恐る恐るゆっくりと「女神」のほうを見上げました。その瞬間、私の身体は宙に浮き、吸い込まれるようにして、女神の手招きする方向に近づいていきました。ゆっくりとした時間の流れの中で、女神との距離が少しずつ近づくにつれ、女神の輪郭がはっきりと見えるようになりました。それは、この世では見ることの出来ない、まさに筆舌しがたい、オレンジ色に輝く神々しいまでの美しい姿でした。あまりの眩しさに、なぜか身体中が震え恐れおののく自分がいました。これから何が起こるのか想像する感覚はもう既に失っています。私は覚悟を決めたようです。思い切って、そして、必死の形相で女神をじっと見続けました。
女神は、にっこり笑ってこう言いました。
「今の自分を捨てなさい。そして困っている人々に手を差し伸べるのです」
私は女神の目をさらにじっと見続けました。透き通った目のなんと美しいことか。遠くかすみの彼方から聞こえるようなその言葉に聞き入っていました。すると、女神の手が私の右手に触れました。やわらかく温かいぬくもりが全身を駆け巡ったような感じでした。それから私は引きつられるままに、高く高く舞い上がりました。私は自分の身体が宙を舞って、まるで夢遊の感覚でした。
しばらく舞い上がったあと、あるところにたどり着きました。その瞬間、なぜか、女神の目から大粒の涙が溢れ出し、美しい顔をとめどなく伝い落ちたのです。そして、女神は私の目を懇願するような目で見つめ続けました。私は、彼女の指差した眼下に広がる光景を見て愕然としました。私は、その光景に激しいショックを受けました。言いようのない深い深い悲しみが全身に覆いかぶさってきました。
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