作家 川北町二 魅惑の世界

◇ 理解に苦しむ出来事

(親愛なるあなたへ!)

お元気ですか?こちらは相変わらず淡々とした毎日ではありますが、至って元気に暮らしています。
先日憤懣やるかたない事がありました。誰にも当たることが出来なくて、私の気持を吸収して頂けるのではないかと考えまして、矛先があなたになってしまいました。ご意見をいただければ嬉しいです。

あなたもご存じなように、私の会社は3階建てのビルの2階にあります。テナントとして入居しています。2階、3階に上る外階段の登り口のところに、狭い駐車場があり、そこにいつも私の愛車が置いてあります。
ある日のことです。いつものように仕事をしていましたら、何やら工事をする音が聞こえてきました。最初、道路工事か何かが始まったんだろうと気にも留めなかったのですが、暫くして、どうも違うらしい事に気づきました。そこで何気なく窓を開けて階下を見たら、びっくり仰天。なんと私の愛車が泥だらけになっているではありませんか。上を見上げたら、数人で外階段の清掃をしていました。

このビルは古く、階段廻りの壁や手摺が汚れていました。時々床を掃除はしていましたが、それでも長年の積もった垢は見るからに汚い状態でした。
ビルのオーナーが、見かねて業者に頼んで清掃に及んだのでしょうが、こともあろうに、事前の連絡も全くなく、しかも車に防塵用のシートをかぶせるでもなく……。
さすがの私も黙っている訳にはいきません。すぐさま工事の責任者を呼び、物事の常識を問いました。ところが、責任者の受け答えは私の想像を大きく逸脱するものでした。決してあるまじき行為を、その責任者は感じていないふうでした。おまけに、暫らくたってからでしたが、水道まで勝手に止まってしまう始末。ああ……、何をか言わんや。

私は空恐ろしくなり、この世の末を感じました。そして私の正義感に火がついてしまいました。 数時間の後、業者の社長らしき人物が詫びに来ました。私は、私と同年輩らしきその社長に言い放ちました。
「あなたは自分を恥ずかしく思わないのか」と……。
この男は職人たちの行為に対し非は認めたものの、ことの重大さが分かっていないようでした。

私は百歩譲っても、この信じがたい態度に、空いた口がふさがりませんでした。唖然としました。この不景気の最中、こんな低たらくな業者が、よくも仕事を受注出来るものだと、合点のいかない私の脳は、その日一日中混乱していました。
ふと、合点がいったことを一つだけ思い出しました。このビルは相当期間空きビルになっていたのです。知り合いの紹介でもあり、立地も良く、テナント料も安かった為に入居したのですが、なるほど、なるほど、そういう事だったのかと頷くばかりでした。入居前に良く調査しなかった自分にも責任があります。紹介してくれた知人に問いただしましたが、申し訳ないの一点張りでらちがあきませんでした。
そして、翌日、事の成り行きを説明すると同時に、契約の解除をビルのオーナー(大家)に申し出ました。オーナーは、私のところにすっ飛んで来て、丁重な詫びを入れましたが……。私は別な場所に移りました。引っ越し作業やそれにかかる費用のことを思いますと、多少の躊躇はあったのですが……。

話は変わりますが、最近欠陥住宅やビルの話題が世間を賑わしています。こんな経験をさせられますと、今の世の中、なるべくしてなっているなあと、技術の低下だけではなく、モラルの低下のひどさを思い知らされたような気がします。
金儲けの為、あるいは目の届かないところは手抜きするような、手段を選ばない的なことが平気で行われているようで、いわばこの嘆かわしい暴力的な行為を受けて、念願の夢の住まいに入居された方は誠に可哀想の一言です。欠陥住宅やマンションをつかまされた上に、大変な額のローンを組んで、長年にわたって支払い続けていかなければならないことを考えますと、背筋がゾッとしてきます。
これらはほんの一部のことかもしれませんが、真面目にコツコツと一所懸命になって努力している人までが、同じような目で見られるのは辛いことですよね。

こんな現実が横行していることを、あなたはどう思いますか?


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