(天使の翼をあなたに)
次の瞬間、電流のようなものが私の身体を激しく揺さぶりました。
「・・・・・・・・・・・ あっ!」
私は小さく叫び、とっさに視線をはるか彼方に移しました。しかしそこには、いつもと同じ山が横たわっているだけでした。
その時、プツッと音がして電話が切れてしまいました。目は遠い景色を見つめたままです。しかし、そこには、やはりいつもと同じ山が、微動だにせず横たわっているだけでした。
私は再びドアを静かに開け店内に入りました。ソファーに腰を下ろすと同時に、窓の外の景色に目をやりました。出窓は何事もなかったように外の景色を絵画しているだけでした。茫然自失と化した私は、冷えてしまった呑みかけの珈琲を一気に口に注ぎ込みました。冷たく苦味の残った黒い液体が、喉の奥にしみて流れていきました。
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数日間、私は悶々と悩み続けました。考え続けました。年老いた両親のこと、仕事のこと、友人たちのこと……。私はこの時初めて人々との絆の中で生きている自分に気づきました。命を燃やすことって、この絆の大切さを思いやることなのだと知ったのです。
ところが、女神は私に「今の自分を捨てなさい」と言いました。そして「困っている人々に手を差し伸べるのです」とも言いました。
ということは、私を取り巻くこれらの絆と、縁を切りなさいということなのでしょうか。それは、とても出来ることではありません。両親のことが気がかりです。早く伴侶を見つけて孫の顔を両親に見せてあげたい。好きな仕事を放り投げる訳にはいきません。友人たちに囲まれた生活は何にも増して楽しいのです。そんな幸せな世界を、とても手放すわけにはいかないのです。いや、むしろ、努力して築き上げてきたこの絆を、ずっと守っていかなければならないのです。それが私の人生の最大で唯一の価値観なのです。
「・・・・・・・・・・・ あっ!」
私は小さく叫び、とっさに視線をはるか彼方に移しました。しかしそこには、いつもと同じ山が横たわっているだけでした。
その時、プツッと音がして電話が切れてしまいました。目は遠い景色を見つめたままです。しかし、そこには、やはりいつもと同じ山が、微動だにせず横たわっているだけでした。
私は再びドアを静かに開け店内に入りました。ソファーに腰を下ろすと同時に、窓の外の景色に目をやりました。出窓は何事もなかったように外の景色を絵画しているだけでした。茫然自失と化した私は、冷えてしまった呑みかけの珈琲を一気に口に注ぎ込みました。冷たく苦味の残った黒い液体が、喉の奥にしみて流れていきました。
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数日間、私は悶々と悩み続けました。考え続けました。年老いた両親のこと、仕事のこと、友人たちのこと……。私はこの時初めて人々との絆の中で生きている自分に気づきました。命を燃やすことって、この絆の大切さを思いやることなのだと知ったのです。
ところが、女神は私に「今の自分を捨てなさい」と言いました。そして「困っている人々に手を差し伸べるのです」とも言いました。
ということは、私を取り巻くこれらの絆と、縁を切りなさいということなのでしょうか。それは、とても出来ることではありません。両親のことが気がかりです。早く伴侶を見つけて孫の顔を両親に見せてあげたい。好きな仕事を放り投げる訳にはいきません。友人たちに囲まれた生活は何にも増して楽しいのです。そんな幸せな世界を、とても手放すわけにはいかないのです。いや、むしろ、努力して築き上げてきたこの絆を、ずっと守っていかなければならないのです。それが私の人生の最大で唯一の価値観なのです。
しかし。……しかし……。
さらに数日間、私は悶々と悩み続けました。考え続けました。
そして……。