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◇ 恐怖-ある喫茶店にて

私はコーヒーが好きで、毎日必ず最低2~3杯はいただきます。
かと言って通という訳でもないのですが、コーヒーをいただく時の、何とも言えないゆったり感がとても気に入っています。
最近の店舗でよく見かけるのですが、いわゆる構造体(骨組み)や給排水やガスや空調などの配管をそのまま見せて、インテリアとして演出する設計があります。
演出の仕方によっては、とても洒落た感じになりますので、特に飲食店などでは良く見かけますね。

私が初めて立ち寄ったこの店もそうでした。
天井の梁や配管がむき出しになっていて、天井扇がゆっくりとくるくる廻り、配色もまあまあで、それなりに良い雰囲気なのですが……、が、しかし、私は天井にびっしり付着しているある物を見てしまいました。
それが何なのか経験上すぐ分かりました。
今まさに世間を騒がせている問題の物質が、目に飛び込んできたのであります。
そうです。アスベストです。

鉄骨の梁(H形鋼)に薄汚れたアスベストが吹き付けてあったのです。
その梁の上部で、照明付の大きな羽根付ファンが、ゆっくりではありますが回転しています。
店内の客は何事もないように、店の雰囲気を、それぞれ楽しんでいるようでした。

もちろん、アスベストが付着しているからといって、すぐ危険な状態とは言えないのですが、私は一時も早くその場を退散したい衝動に駆られましたが、ちょっと待てよ!このまま退散しても他のお客さんのこともあるし、よし!ここはひとつ正義の味方だあ~!なんて気持ちになってしまい、かといって大声を張り上げて、
「アスベストが天井に吹き付けてありますよ~」
なんて営業妨害するみたいで言えないし、ここは一つ店長に聞いてみようと考えて、ウェイトレスに小さな声で店長に会いたい旨の話をしましたが、あいにく店長は不在とのこと。

考えあぐねて私は、仕方がないと思い、そのウェイトレスに小さな声で、
「あなたはアスベストって知ってる?」
と尋ねてみました。すると、
「はい知っています。最近よく新聞に載っていますから」
と答えるではありませんか。そうか、じゃ話が早いと思い、私はさらに、
「じゃ、アスベストって実際にはどんなものか見たことある?」
と尋ねました。すると、彼女曰く、
「いえ、それは知りません。それがどうかしたのですか?」
と逆に不審な感じで尋ねてきました。

私はすかさず、指で天井を指してこう言いました。
「あのね、あの白いブツブツしたのが吹き付けてあるでしょ?」
私は彼女の目が天井に向けられている姿を見ながら、
「あれが何なのかを調べるように、店長に話したほうがいいと思うよ」
すると彼女は察しが付いたのか、驚いたような様子で、
「お客さんはどういう方ですか?」
と尋ねてきました。私は、
「私の事はどうでも良いから、とにかくこの事を店長に話しておいたほうが良いと思うよ」
とだけ言い残してその店を後にしました。

多分、このような事は多々あるような気がします。
アスベストという名前は知っていても、実際に、どんなものなのかを知らずにいる人は結構多いと思います。

知らずに建物を壊すときにアスベストが飛散してしまい、それを吸い込んでしまった、なんてことにならないようにしたいものですね。考えてみたら、ぞっとするような怖い話ですね。

かのお店には、その後行っておりませんが、その後どうなったかは、もちろん気になるところですので、機会がありましたら、後日お話できればと思っています。