私は下戸です。
全く飲めないという程ではありませんが、人様には下戸と言って通しています。
その下戸が、昨年の暮れのことですが、友人にそれぞれ銘柄の違う焼酎の3本組を贈りました。
贈った焼酎は、私が晩酌でいつも好んでいただいているものなのですが、これがいたく友人に喜ばれて、毎日至福の贅沢を味わってるというメールを貰いました。
焼酎は文化遺産だ!
焼酎は人により、その味によって好みがありますので、どうだったかなと内心気にはしていたのですが、メールを見て、贈って良かったなあとつくづく思いほっとしました。
それ以来私の焼酎への思い入れが始まりました。
旨い焼酎
珍しい焼酎
人知れず世に隠れたこだわりの焼酎
滅多に手に入らない地焼酎……。
これまで単に一日の終わりの行事であった晩酌が、味見のテーブルと化し、横目で怪訝そうに私を見る妻を無視して、ソムリエよろしく悦にいっている自分がいます。
そうしますと、今まで決して気づくことのなかった焼酎の世界が、舌と喉を通して、協奏曲のように奏で始めたのであります。
ありとあらゆる酒屋やスーパーやコンビニを廻り、焼酎の顔と味を勉強しました。
それはそれは実に楽しいひとときでした。時を忘れさせてくれました。今でも酒屋の店主と仲良くなり、いろいろな情報を教えて貰ったりしています。
友人などからの贈り物は、前もって「焼酎がいいなあ」と伝えたりもしました。(笑)
それでも焼酎のことは、まだまだ無知なのです。それだけ、深くて広い未知の魅力!たどり着けないほどの魅惑の世界なのでしょうか!
先述の通り、私は決して酒豪ではありません。でも焼酎がかもし出してくれる、何とも言えない世界に身を委ね、ただただ酔いしれていたいのです。
私は決して文化を論ずる人間ではありません。でも素朴な液体、それでいて、ほのかな香りの中に誘い込む、芳醇で深みのある味わい。お湯割りに良し、水割りに良し、オンザロックもまた良し。身も心もとろけ、捧げたくなるような、そんな、こよなく愛してやまない焼酎!
焼酎、それは、
先人が贈ってくれた最高の文化遺産のような気がします。
仏の親父が変身!
焼酎のメッカ鹿児島では、昔から晩酌のことを「ダイヤメ」と言うそうです。
ダイ=ダレ(疲れ)がヤメ=止む。つまり、焼酎を飲んで疲れを取ると言う意味だそうです。ま、呑んべーが焼酎を呑みたいばかりに、焼酎を呑むと一日の疲れが取れて次の日の仕事に精が出る。だから「ダイヤメ」するんだという大義名分が生まれた……。とも聞いています。
焼酎は二日酔いにならないなど、程よくいただけば体に良いと言われていますので、今日一日の出来事を思い浮かべ、明日のことを思いはせながら呑む焼酎はまた格別なものですからね。
親父の話で恐縮ですが、
私の親父は、それはもう凄い酒豪でした。それこそ、雨が降ろうが台風が来ようが、晩酌は欠かしたことがありませんでした。一升瓶が瞬く間に無くなっていきます。
近くの焼酎屋の息子が、私の同級生で、毎晩の如く焼酎を買いに行かされる度に、ニヤニヤしながら、一升瓶を手渡してくれたものです。
親父は典型的な男尊女卑、亭主関白でしたが、焼酎の呑み方も豪快でしたね。
それはいいのですが、親父は呑むほどに酔うほどに、だんだんと様子が怪しくなってきます。毎晩のことですので、どのくらいの量が体内にはいったかによって、親父がどうなるかということが分かっていました。そろそろかなと思われる時間に、そっと家を抜け出して、友人のところに遊びに行ったりしたものです。
その「そろそろ」とは、普段は仏といわれていた親父が、突然大声を出して説教に及ぶことを指します。
子供たちを目の前にずらっと正座させて、人間としての生き方や、社会的な勉強の仕方について延々と語り始めます。
そこまではまだいいのですが、たまに片手に焼酎コップを持ちながら、ろれつが廻らなくなって大声で怒鳴り散らし始めます。
子供達は先ほども述べましたように「そろそろ」の時間帯に、要領よく退避できますが可哀想なのは母親です。
親父としても、子供たちがいなくなって、やむなく母親にその矛先を向ける訳ですが、母親は、いつものことで慣れていることもあるせいでしょうか、その点強かったですね。
あまりの親父の態度に、普段いつもニコニコして優しい母親が、親父に向かって大声を出してたしなめる姿を見る時もありました。そんな時、母親の迫力に圧倒された親父は、シュンとなり、すごすごと寝床に向かう姿を良く見たものです。
そんな姿を見ますと、何だか勝手気ままで頑固で強情な親父でも、憎めなくなってきますから不思議です。
次の日の朝、縁側で、何事も無かったかのように、ニコニコしながら、キセルにタバコの煙を揺らせながら、天を仰ぎみる親父の姿があります。それは、夜が来るのを楽しみにしているようにも見えました。
焼酎は、とても幸せで至福のなひと時にさせることもあります。しかし、何事もそうですが、度が過ぎるといただけませんね。ホドホドに!
それにしても、サッカーや野球を見ながらいただく晩酌の、なんと美味しいことか!なんと解放的で楽しいことか! あぁ!
親父が生きていれば、一緒に飲み交わしたかったなあ!と思う今日この頃です。
焼酎事件簿
焼酎ブーム最盛期の頃でしたが、ある酒屋でこんなことがありました。
初めて行く酒屋だったのですが、棚に並べられた焼酎を見てびっくりしました。今をときめく入手困難な焼酎がずらっと並んでいるではありませんか。
森伊蔵、魔王、村尾、佐藤……。価格も通常価格と思われる。私は我が目を疑いました。そして釘付けになってしまいました。胸がどきどきして、へーこんな酒屋もあるんだ。と感心することしばしでした。しばらくして、少しの手持ち金がありましたので、
「これ下さい!」
私は”佐藤の黒”を指差して言いました。店主のたまわく、
「ポイントカードお持ちですか?」
初めて来た店だし、そんなもんある訳ないじゃん。
「ポイントカードって何ですか?」
「はい当店では4,000円お買い上げ毎にお客様に1ポイントを差し上げています。ですから、その焼酎は5ポイントですから、20,000円分お買い上げいただいた方だけがお買い求めいただけます。」
ナヌ?
私はその焼酎にぶら下げてあったメモを見ていなかったのです。よく見たら確かに小さな札に5ポイントと書いてあるじゃありませんか。
ああ そういうことか。
なるほどね。道理でね。
私は訳の分かったような分からないように呟いていました。
どう思いますか?皆さん。
ちなみに、”森伊蔵”には50ポイントのカードがぶら下がっていました。
50ポイント?ナニ?200,000円分この店から買わないと譲ってくれない?
だいたい1本2,000として100本分?週に2本ずつ飲んでも1年分もある勘定になる。いくら超人気の有名銘柄とは言え、たかだか焼酎1本買うのに……。そんな馬鹿な!
店主も私の表情を感じ取ったのか、さすがに申し訳なさそうな顔はしていましたが、私はアホらいくなって黙ってその場を退散しました。
酒屋も変わったもんですねえ……。 ウーン
あんたも通だね!
ある酒屋でこんな光景に出くわしました。
私は、店内いっぱいに並べられた焼酎を見ながら、今夜はどの焼酎にしようかと思いあぐねていたところ、初老の男性が、すっと1本の焼酎を大事そうに両手で抱え、まるでわが子を抱くようにして、レジの方向に向かっていきました。
私は思わず声をかけてしまいました。
「おじさん、その焼酎旨いんですか?」
考えてみたら、馬鹿な質問をしたものだと後で苦笑しましたが、真っ黒に日焼けしたそのおじさん(失礼?)は、私に向かってにっこり笑ってこう答えました。
「俺にはこれが世界で一番旨い味だね」
世界で一番旨い味?と言われて、これは買わなくっちゃ!私はその人が抱えていた同じ銘柄の焼酎を手にして、レジでそのおじさんの後に並びました。
おじさんは、私が同じ銘柄の焼酎を持っていたことが余程嬉しかったとみえて、顔中しわくちゃにして笑いながら、
「あんたも通だね」
ですって。
その晩は、その優しそうなおじさんを思い出し、今頃同じ焼酎を味わってるのかなあと、右手でそっと乾杯していただきました。確かに旨い!おじさん!ありがとう。また会えるといいなあ……。
焼酎は二日酔いになりにくい。 嘘?ほんと?
誰でも一度や二度くらいは経験されていると思いますが、お酒やウィスキーを飲んだ後の悪酔いや、翌日に、いわゆる二日酔いになることがあります。
ところが、焼酎の場合はこれが殆どありません。(実はこのことが焼酎の人気の一つになっているようですが…)どうしてでしょうか?
ご存知かもしれませんが、お酒が体内で代謝されるときに出来る、アセトアルデヒドという物質が原因と言われています。アセトアルデヒドには、多少の毒性があります。ですから、アセトアルデヒドが体の中にたまると、神経が刺激されて、頭痛や吐き気などの不快な症状が現れる訳です。
ところが、焼酎が悪酔いや二日酔いしにくいのは、焼酎は、ご存知のように蒸留して作られます。蒸留したお酒(焼酎)よりも、蒸留しないで造るお酒(日本酒・ワイン等)のほうが、このアセトアルデヒドが多く含まれているからだと考えられています。
また、焼酎の飲み方も、お湯割りや水割りにして、適度にアルコール濃度が、薄められているところにもよるものと思われます。
ですが、いくら二日酔いしにくいからと言っても、「過ぎたるは及ばざるが如し」です。ほどほどの量を、じっくり楽しみながらいただく。これが最良の健康法だと思いますが、いかがでしょうか。
焼酎愛好家には痩せた人が多い。ウソ? ホント?
まず次のデータを見てください。(5訂食品成分表より)
日本酒180ml(お銚子1本) ⇒ 185kcal
焼酎60ml(コップ1/3杯) ⇒ 85kcal
量が違いますので単純には比較になりませんが、焼酎の場合は、平均的に6:4の割でお湯割りにしたとして、日本酒と同じ量に換算しますと、焼酎そのものの量は108mlになります。これを、カロリーに換算しますと153calになります。
このように見ると、焼酎は低カロリーといえそうです。
だから焼酎愛好家には痩せた人が多い?
いや、これはウソとは言いませんが当たってはいませんね。その証拠に、私の周りの愛好家にも、結構肥満の人が散見されますもの。焼酎と共にいただく、つまみや料理の食べ過ぎによるのかもしれませんね。
料理の味が焼酎の味を引き立たせるのか、焼酎の味が料理の味を引き立たせるのか分かりませんし、太る要因は人により様々ですので一概に言えませんが、いずれにしても、度の過ぎた美飲美食は良くないようですね。
アルコール飲料には製造過程により、醸造酒・蒸留酒・混成酒の3つの種類に分けられます。
焼酎は蒸留酒です。お酒などの醸造酒と違い、蒸留酒はアルコール以外のエネルギー(糖分等)をほとんど含みません。ですから、血糖値が気になる方にも、気にせず飲める嬉しいお酒と言えるのではないでしょうか。
また、焼酎はアルコール飲料の中でも、プリン体と言われる成分の量が極端に少ないことが知られています。それが為に痛風になりにくいとされています。
このように、体に優しい焼酎。ですが、いくらそうだからと言っても、やはり「過ぎたるは及ばざるが如し」です。またまた言ってしまいますが、自分の体に適したほどほどの量を、じっくり楽しみながらいただく。これが最良の健康法だと思いますが、いかがでしょうか。
焼酎は料理に使うお酒やワインの代わりに、なる? ならない?
焼酎を料理に使用する時、加熱調理しても有効成分は消滅しないと言われています。ですから焼酎は料理に使っても、健康上効果があると言えると思います。焼酎に含まれる有効成分には、アルコール以外のものも多数含まれていると考えられるからです。
かと言って、お酒やワインの代役はどうでしょうか。調理の仕方や味付けはそれぞれですからね。あまり料理について詳しくないものが言うのもなんですが、つまり、
お酒を入れて調理した味と、
ワインを入れて調理した味と、
焼酎を入れて調理した味とは、
自ずとそれぞれ味が違うのは当然と考えられますので、レシピによって使い分けることになると思います。
また、芋焼酎、麦焼酎、黒糖焼酎による違いや、黒麹、白麹、黄麹などの違いによって出来た焼酎によって、当然味が違ってくるものと思われます。
一度じっくり研究したいテーマかもしれませんね。飲んで旨く、それでいて健康にも良い、と言われる焼酎ですが、料理にも使えるとなると嬉しいですね。
焼酎を料理に使うと次のような効果が期待出来そうです。一度試してみてはいかがでしょう。
●肉などが柔らかくなるみたいです。
●魚や肉などの生ものの臭みが消えました。
●全体に味が染み込みやすくなるようです。
焼酎に含まれる成分の働き
焼酎のアルコール分は、蒸留するときに抽出されます。同時に微量ですが多くの他の成分も抽出されます。
私は朝鮮人参を焼酎に漬け込んで保存し、健康飲料として飲んでいますが、昔から漢方薬は焼酎で煎じたり、漬け込んで用いていたようですね。焼酎に含まれる多種微量な成分により、より高い効果が発揮されたものと考えられます。
その成分の中に、血栓を溶解してくれる酵素「ウロキナーゼ」を増やす働きのあるものもあると考えられています。
血栓を溶かす作用があるということは、焼酎を飲むことによって血液がサラサラになる作用 があると考えられます。特に焼酎の香りの中に、これらの成分が含まれていると言われていますので、焼酎を飲む時には香りをゆっくり深く嗅いで飲むと良いかもしれませんね。その意味では、燗をしたりお湯割りにするのは、単に美味しいからではなく、昔の人の知恵で、香りを嗅ぐ道理があったのかもしれませんね。
もう一つ、
焼酎を飲むことで、血栓を溶かす酵素「ウロキナーゼ」が増加する効果があるとすれば、焼酎を適度にいただくことにより、血管が詰まることによって引き起こされる病気の、心筋梗塞や脳梗塞の予防にもいいかもしれませんね。そうなると、ほんとに嬉しいことですね。
ところが、私の親父は凄い大酒のみでしたが、それこそ、脳梗塞で死亡してしまいました。ということは、「ウロキナーゼ」が働かなかった?
ということは、今までの話はウソ?
違うんですね。
いくら血液をサラサラにしてくれるといっても、万能ではない訳ですので、違う要因で死んだのかもしれません。そうです。多分飲み過ぎが原因でしょう。これまたやっぱり何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」ですね。何度も言いますが、ほどほどの量を、じっくり楽しみながらいただく。これが最良の健康法だと思います。
焼酎を飲んでストレスから開放!
好きな焼酎をいただきながら、歌を唄ったり、良き友と団欒したりする時ほど、心身をリラックスさせるものはありません。
今の世の中、ストレス社会と言われて久しいですが、そのストレスから来る諸々の病が今問題になっています。
ストレスが、種々の生活習慣病などの引き金になっていると言われていますが、おっとどっこい!上述のように、焼酎を楽しく愉快に飲むことで、ストレスを発散出来るとすれば、こんな嬉しいことはありませんね。昔から「酒は百薬の長」とも言われます。やはり百薬の長になるような飲み方が大事なようですね。
焼酎そのものの美味しさや、酔いによる精神的なリラックス効果もありますが、最近では、焼酎のもたらす香りを楽しむことで、アロマテラピー的な効果も大いに期待できます。
ストレス解消とアロマテラピー。焼酎の持つこれらの役割を、実際に体感した人だけが知り得る、焼酎の奥深さと魅力。このことが、焼酎愛好家を虜にしているゆえんかもしれません。
私は時々、スナックなどで焼酎を楽しんでいますが、好きな歌を唄い、時には口説きたくなるような美女?と会話を楽しみ、はたまた時には、昔ながらの気の置けない友人と、夜遅くまで団欒するときの、あの何とも言えない開放感と充実感は、まさに焼酎のもたらす特効薬ではないでしょうか。
ですが「焼酎は飲んでも呑まれるな」です。「過ぎたるは及ばざるが如し」です。やはり、ほどほどの量を、じっくり楽しみながらいただく。これが最良の健康法だと思います。これが結論ですね。ハイ!