◆ 欠陥住宅は、どうして引き起こされるのでしょうか?
いきなり欠陥住宅のお話で恐縮ですが、欠陥住宅は、どうして引き起こされるのでしょうか?一緒に考えてみませんか?
一世一代の家づくりなのに、欠陥住宅に住むはめになったなんてことになったら、それこそ悲劇ですよね。(こんな事を敢えて書かなければならないなんて、ほんとに悲しい事です)
引き起こされる原因について少し考えて見ましょう。およそ次のような事が考えられます。
▼ 敷地の調査
当たり前の話ですが、建物は敷地の上に建つわけですので、その敷地の性格、例えば、道路との高低差・地盤の硬さ・方位・電柱の位置・水道やガス管の引き込み位置・隣家の状況・周辺の環境等々、事前に調べておかなければならない事がたくさんあります。
この中でも地盤の硬さは非常に重要です。見た目には、硬そうでも、実際にはそうじゃない場合が殆どです。安易な判断や勘に頼った判断は絶対禁物です。
地盤の硬さを測定する簡単な機械があります。しかも低価格で出来ますので、最低でもこれくらいの事はしておいたほうが安心です。
この地盤が起因して欠陥住宅に至る場合が少なくありません。
▼ 設計(図面)の打合せ
家づくりの上で、設計の打合せほど大事なものはありません。一般に「間取り」のことを設計と思われてる方が多いのですが違います。間取りは単なる平面図ですので、間取りが出来たから、設計が出来たなんてことにはなりません。
建物は立体ですので、立体の図面があれば、建物のイメージが良く理解できますね。
ところが、立体の図面で打ち合わせしている業者は多くありません。あっても、せいぜい外観の立体図(外観パースと言います)くらいのものでしょう。
肝心なのは内部です。内部の各部屋の立体図、内観パースや鳥瞰図はどうしても必要です。ところが、殆どの業者は、この図面の提出が出来ていません。
ですから、現場が進行し完成間際になって、自分の描いていたイメージとかけ離れた家が出現するのは、言ってみれば当たり前の事なのです。
設計者が、施主の希望や意向やイメージをどれほど深く理解し、図面や見積書に反映出来るかは、施主側の問題よりも、設計者の人間性や能力によるところが大きい訳ですので、もし結果として欠陥住宅になったとすれば、設計者や工事を受けた会社の姿勢や考え方や能力に起因したと考えざるを得ませんね。
▼ 設計図書の中身と精度
図面はたくさんあります。どれを省いてもいけない図面ばかりです。
図面の不備や精度の無さが原因で欠陥住宅に至る場合も少なくありません。
▼ 契約書の中身と取り交わし方
まさか今時、契約書もなしで家を建てるなんてことは無いでしょうけど、問題は中身と取り交わし方です。
契約書の不備や内容の曖昧さが原因で、欠陥住宅に至る場合も少なくありません。
▼ 現場管理のあり方
現場の管理は経験豊富な技術者でないとまず出来ません。
大概の場合職人さん任せが多く、得てしてこれが原因で欠陥住宅になる場合があります。
腕が良くて、しっかりした考えを持った職人さん達ばかりならまだいいかもしれませんが、問題は、施主の希望や意向やイメージを、職人さんに正しく伝え、それが現場に確実に反映されなければ意味をなさないわけですから、現場管理の良し悪しはとても重要なことなのです。
建物を建てるということは、犬小屋を建てるのとは訳が違います。
しっかりした経験と能力の豊富な技術者の管理があって初めて良い家が出来るのだ、ということを肝に銘じておくべきですよ。
欠陥住宅は、偶然に引き起こされるものではなく、
起こるべくして起こることが、これで良くお分かりいただけたと思います。
少し固い話になりますが、ここでは、さらに突っ込んだ家づくりについての話を進めます。
住宅に限らず、建物の設計や施工に関する基準は、建築基準法に細かく記載されておりますし、住宅だけ取りますと、ご存知かとは思いますが、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の基準もあります。これらの基準通りに設計し、施工すればなんら問題は発生しないわけですが、そうでもない現実が散見されるところに、この問題の根の深さがあります。
今真剣に家を建てたいとお考えの方にとっては、ほんとに不安なく楽しい家づくりが出来るのだろうかと、ご心配の向きもあろうかと思います。どうしますか?
一般に住宅会社の台所事情は表立っては分りません。しかしながら、尻に火がついた状態を通り越して、もはや大火寸前の状態のところも結構多いということを理解しておくべきです。
その様な会社は、取り敢えず資金を回さなければなりませんので、勢い仕事欲しさに原価すれすれの価格で受注する場合が多くなります。これだけとれば、発注者(施主)にして見れば、コストが安くなる分有り難い訳ですが、どうでしょうか。
はたして、有り難い話になるのでしょうか?
▼ ここからは非常に重要なお話です。
家を建てる際に、業者との契約さえ終えれば、後は家が出来上がるのを待っているだけだけで良い……。といったような考えが、もしかしたらあるのではありませんか?
いえ、例え「じっくり一部始終見てやるぞ」と意気込んでみても、業界はもとより工務店などの内情が分りにくい面があったりして、非常に不透明な感じを受けておられるのではないしょうか。それ故に、いつしか「素敵な夢のある家を建てたい」という希望を膨らませながらも、
「何だか良く分らないから、ハウスメーカーに頼めば面倒な手配も全部やってもらえるし、営業マンもしっかりした良い人みたいだから、間違ったことはやらないだろう……」と思ってしまいがちです。
一方住まいを受注した業者も、
「契約後の仕事は全部任されているのだから」とか、
「お客様に聞いても専門的なことは多分分らないだろうから、これで進めよう」
などと勝手な判断でコトを進めようというきらいがあります。その結果が現在のような住宅建築の世界を作り上げて行ったのかもしれません……。
もちろん、誤解のないように申し上げれば、全ての建築業者が、このような曖昧な仕事をしてきた訳ではありません。多くの建築業者は、それを生業とする以上、持ち得る技術のすべてを駆使し、精一杯頑張って「プロの仕事」をしてきています。実際にはそういう業者が多いのも確かです。
しかし、これだけ欠陥住宅が続出している現在、われわれ建築に携わる全ての者は、これまでの建築業界の常識というものをもう一度じっくりと見つめ直し、良き習慣だけを残し、悪しき習慣、無意味な習慣や考え方などはすべて排除し、もともとの建築の主旨である、お客様の大事な家を、我々がお手伝いして造らせていただいているのだという基本に戻り、プロとしての誇りを持った仕事=建築の在り方について、真剣に考えていくべきだと思っています。
一方建て主の方々にも「建築業者と契約さえ済ませればもう大丈夫」といったような根拠のない安心感や、盲目的な考えを捨てていただきたいのです。
「家づくり」という大変で難しくて面倒臭いもの……、と思っておられるかもしれませんが、自らもっと家づくりについての知識を高める努力をすることで、チェック機能を働かせることが出来、場合によっては大金をドブに捨てなくて済むかもしれません。
何よりも、家づくりは、未来の家族の人生をも変えてしまうかもしれない一面も持ち合わせていますので、自ら積極的な気持ちでこの大事な作業に取り組んでいただきたいと強く思っています。
恐らく殆どの方が人生最大の買い物となるでしょう。そして、多くの方々が、その決して安くは無い金額の住宅ローンを組み、数十年もの年月をかけて払い続けていく事になるのです。
そして当たり前のことですが、それは決して建築関係者のための家ではなく、自分自身そして大切なご家族の為の家なのだということを、じっくりと考えていただきたいのです。家は造って貰うのではなく、自分の手で造らなければ意味がありません。どういう事かと申しますと、あなたの意思(命令)に従って、業者は家づくりのお手伝いをしているのだという認識を持つべきだということです。
その実現の為に、私が持っている長年の経験から得た知識や情報等を提供することで、少しでも皆様のお役にたてればという思いがあります。
「家づくり」は正直、建築業者はもちろんですが、建て主にとっても非常に大変な作業です。
でも少しずつでも分かってくると、「こんなに楽しいものはない!」というほどの醍醐味のある作業でもあります。