建主と工務店や建設会社等の、いわゆる施工業者との契約(工事請負契約)を締結するについての、特に留意しておきたいことについて書いてあります。
設計事務所が関与してる場合、契約締結の際には設計者も立ち会います。
非常に重要なところですので、しっかり勉強しましょう。
◆ 契約書の中身をしっかり把握しましょう
契約書の中身(最低限必要な書類)
- 工事請負契約書
- 実施図面(契約図面)
- 見積書(工事費内訳明細書付き)
契約とは、工事に関する内容についての、双方(この場合は建主と施工業者)の遵守事項(約束事)を確認するものです。
早い話が、どのような家を、いつまでに完成させて、いつの時点で、いくらの工事金を施工業者に支払うかを文書で約束するものと思って下さい。
◆ 工事請負契約書に目を通しておきましょう
工事請負契約書には、簡単なものから約款付のもの等いろいろな書式があります。一度目を通しておくことをお勧めします。
基本的には消費者(建主)保護の立場に添った内容になっていますが、中には請負業者に有利なように、内容(文面)を改ざんしている業者も見受けられますので注意が必要です。
極めて重要な書類ですので、しっかり勉強しておきたいところです。
▼ 施工(実施)図面をしっかり把握しましょう
◆ 施工(実施)図面
施工(実施)図面は、読んで字の如く、大工さん達が実際に家を建てる為に作られた、言わば実施マニュアルみたいなもので、各部材の大きさ(平面的な形状・立面的な形状等)や形が、細かく記載されています。
この図面がいい加減ですと、いい加減な家になります。
具体的には、次のような図面です。
併せて各図面に対する簡単な注意事項やチェックしておきたい事について書いておきます。
画質が良くないですが、図面は拡大してご覧になれます。(図面名にマウスを乗せて下さい)
家の内外の仕上げ表として表示する場合もあります。
建主の名前・建築場所・家の床面積のほかに、各部位例えば、外壁とかリビングルームの壁とか天井とか床とかを、どんな仕上げにするかということが記載されています。
そればかりではありません。
例えば、雨樋のメーカーはどこで、直径はいくらだとか、柱の大きさ(断面寸法)はいくらだとか、そんなことも記載されています。
図面では表示しきれない部分が、細かく記載されたものと思ってください。
尚、住宅金融支援機構融資工事の場合は、公庫基準の工事仕様書に従って工事をしなければなりませんので、その旨の記載が必要です。確認しておく必要があります。
参考 住宅金融支援機構
参考 【フラット35】の対象となる住宅・技術基準
意匠図面の中には次のようなものがあります。
各階の面積をはじめ、建物に使われる材料(仕上げ材や設備品等)のメーカー名・品番・寸法等を使われる各部毎に表示します。
例えば、トイレに手摺が付くのかどうかとか、バリアフリーになっているのか等が表示されます。
工事現場は何処なのかを表示するための現場付近の地図です。
材料搬入等の場合この地図が役立ちます。
敷地に対して家をどの位置に配置して建てるかを表した図面です。敷地に高低差がある場合には、敷地断面図も表示します。道路の巾とか方位とかも表示されます。ガレージの位置や外構計画ににも使われます。
1/100精度の図面で充分です。
敷地面積の根拠を明らかにする為の図面です。
ご存知かもしれませんが、建蔽率や容積率の算出には、この敷地面積に対する割合が用いられます。
ですから、敷地面積計算は大変重要な計算となります。
1/100~1/200精度の図面で充分です。
家の間取りを水平に切断したものを、真上から見たものです。
筋違(耐力壁)の取り付け位置等も表示されます。
クーラーや絵画や吊戸棚等壁に取り付ける機器類によっては、釘やビス等の効きを良くする為に、合板や角材等で補強をしておくことを、お奨めします。カーテンレールの取り付くところも同様です。
平面図若しくは展開図等に、それらの表示をしておく必要があります。
さらに、押入等に枕棚(お分かりですかな?)を取りつけてもらう場合も、記載してもらってください。
尚、細かい話ですが、後でとても不便を感ずることに、電気のスイッチの取り付く場所の問題があります。ドアの開き勝手等には充分気をつけて下さい。
出来れば1/50精度の図面が、細部が良く分かりますので、お奨めです。
構造図面の中には次のようなものがあります。
基礎の配置・形状等を平面的に表示した図面です。
束石の配列・アンカーボルトやホールダウン金物の位置・基礎の断面や配筋(鉄筋をどのように配置するかを表示した図面)も、併せて表示します。
1/50精度の図面がお奨めです。
各階の床組を、平面的に表示した図面です。
土台・大引・根太・火打梁・桁・胴差・梁等が表示されます。
プレカット工場ではこの図面を元に、入力され加工されます。
構造上最も重要な図面です。
出来れば1/50精度の図面が細部が良く分かりますのでお勧めです。
ところで、上の部材(土台・大引・根太・・・・・・)の意味が分かりますか?
屋根を支える為の小屋組を平面的に表示した図面です。
母屋・小屋束・火打梁・棟木・隅木・谷木等が表示されています。床伏図と同様、プレカット工場ではこの図面を元に、入力され加工されます。
これも、出来れば1/50精度の図面が細部が良く分かりますのでお奨めです。
ところで、上の部材(母屋・小屋束・・・・・・)の意味が分かりますか?
家を縦方向に切断した図面です。
各部材の取り合いや、仕上げや天井高さなど、細かい寸法が表示されています。公庫申請の場合は必ず添付しなければならない、とても重要な図面です。
これは、通常1/30~1/20精度で表示します。
設備図面の中には次のようなものがあります。
電灯やコンセント、スイッチ等の配線のほかに、テレビや電話、冷蔵庫やレンジ、給湯器やエアコン等、電気を必要とする機器の設置場所に従って、どのように配線するかを表示した図面です。
エアコンは都合で、将来付けるという場合もあります。そのような場合は、取り付けるであろう個所に補強はもちろん、配線だけはしておくことを、強くお奨めします。そうでないと、実際に取り付ける際に、思わぬ費用が掛かる場合があります。
また、分電盤の取り付け位置や回路数なども表示されます。
さらに最近ではパソコンの設置が多くなってきました。1階に1台、二階に1台という事もあります。これらも、予め配線だけでもしておきますと、とても便利です。
尚、平面図のところでも述べましたが、電気のスイッチの取り付く場所の問題があります。ドアの開き勝手等には充分気をつけて下さい。
さらに、いざ寝室に入ろうとする時に、スイッチの位置が寝室から遠い為に、暗い廊下を手探りして、寝室まで歩かなければならないなんて、笑えない話もあります。この場合は3路スイッチという便利なものがありますので、これを採用してください。
また、トイレの電気の消し忘れを気づかせるようなスイッチもあります。検討してみて下さい。
1/50精度の図面がお奨めです。
システムキッチンや便器や洗面台やユニットバス、給湯器等に、水やお湯やガスを供給、及び排出する為の配管図です。
注意する点は、特に2階にトイレや洗面所やユニットバス等がある場合には、1階の天井裏の懐が低く、排水管の太さや勾配によっては、無理な施工を余儀なくされる場合があります。
これが元で、排水管が詰ったりすることも考えられます。出来れば、木造と言えども、パイプシャフト(PS)と言われる管の通るスペースを設けたいものです。
尚、ガスには、ガス質なるものがあります。各機器がそのガス質に合った機器かどうかも、チェックしておきましょう。
また、配管された後、大工さんが壁などのボード類に釘を打つ際、誤って、管に釘を打ってしまって、水漏れを起こす場合があります。くれぐれも注意するようにしたいものです。
出来れば1/50精度の図面が細部が良く分かりますのでお奨めです。
各種詳細図の中には次のようなものがあります。
台風等の風の力(風圧力)や、例えば雪や瓦などの上から家に加わる力(鉛直荷重)等に対して安全かどうかを数値で表した図面です。
軸組計算表と言う場合もあります。筋違や合板等の耐力壁がこれらの荷重に対応する訳ですが、その量が充分かどうかの判定をするとても大事な図面です。
意外とないがしろにされているようですが、とんでもないことです。この計算がなされていない家は、まず危ないと疑っていいと思います。
1/100精度の図面で充分です。
この図面は、筋違や合板等の耐力壁が、バランス良く配置されているかどうかをチェックする為の図面です。
地震が起きた時、建物が破壊されないようにする為には、耐力壁(筋違や合板)を、いかにバランス良く配置するかに掛かってきます。その意味でこのチェックのことを、耐震チェックとか耐震設計とか言われています。
耐力壁の計算をクリアしたとしても、それらがバランス良く配置されてなければ意味を成さないという事です。
専門的にいいますと、重心(家の中心と考えて下さい)と剛心(耐力壁の中心と考えて下さい)との距離を数値で表したものを偏心率と言いますが、この偏心率を、限りなくゼロに近づけるような、耐力壁の配置が重要なわけです。
数値が0.15以上の家は、危険だと認識する必要があります。
阪神大震災や東日本大震災はこれらの教訓を生々しく教えてくれた、と言っても過言ではないと思います。
但し、どんなにこれらのチェックが行われ、図面上に表示されたとしても、現場がそのようになっていない、若しくは取付け金物の施工精度がいい加減ですと、全く意味を成しません。くれぐれも注意して下さい。
1/100精度の図面で充分です。
重要!
契約書に印鑑を押す前に、もう一度良く施工(実施)図面を点検してください。
不足な図面があった場合には追加してもらいましょう。
分からないことや疑問点は、設計者や担当者に聞き確認しておきましょう。
出来れば1日2日程度じっくり検討してから印鑑を押してください。
▼ 見積書をしっかり把握しましょう
良く一式見積書だけを添付して契約される方がありますが、あまり良い事ではありません。いや絶対に避けなければなりません。そのような契約を推し進める業者とは即刻縁を切るべきです。
各工事項目(基礎工事・仮設工事・木工事・・・等)毎の詳細の見積書を添付してもらいましょう。
ここで積算と見積もりの違いを分かり易く述べてみます。
積算とは、例えば屋根の面積がいくらあるかという数量を指します。
見積もりとは、積算された数量に単価を掛けて得られた金額のことです。
ですから、見積書とは全工事の明細項目を積算し、それにそれぞれの単価を掛けた集計書です。
平面形状や屋根勾配や軒の出等々によって、算出される数量が違ってきます。当然金額も違ってくるわけです。
ですから、この明細見積書の作成を省くということは、いわば暴挙に等しい訳です。
分かり易く言いますと、例えばリビングルームの壁をクロス貼から板張りに変更したい場合に、一式見積書の場合、追加の工事費用はどうやって算出されるか分かりません。全てがアバウトになってしまって、いい加減になってしまいます。結果、高い買い物につく場合が多々あります。注意したいものです。
そもそも、明細見積書を提示しない施工業者に工事をお願いすること自体が無茶です。
「どうぞ、お好きなように造ってください」
と言っているようなものですからね。
それから、見積書と図面は表裏一体のものです。
図面内容に沿った見積内容になっているかどうかをチェックすることは、とても重要なことです。
もし、自分でチェックできないときは、お金を払ってでも専門家にチェックしてもらいましょう。その方が結果的に安くなる場合が多いと思います。