木造住宅における耐震については、阪神大震災や東日本大震災が発生するまでは、あまり気にされてこなかった歴史的経緯があります。
当然、一般の施工業者や設計事務所、いや、お役所ですらその認識が薄く、ないがしろにした背景があります。ですから、こと木造住宅の耐震については、極めて問題ありだということを意識しておくべきです。
つまり、専門家である筈の設計事務所やハウスメーカーと言えども、こと木造の耐震についてはあまり知識がなく、耐震上のクリアしなければならない5つの要素(別掲)について、理解もしくは計算できる能力を持ち合わせていない業者が多かったと言っても過言ではないと思います。
技術が人の命を守るという確信
ここで私が声を大にして申し上げたいのは、一瞬のうちに破壊してしまう地震の恐怖は、台風などの比ではありません。その恐怖から人命を守るための、家づくりに於ける確たる技術的裏付けがなければ、いつまでたってもこの恐怖から逃れることは出来ません。
恐怖から人命を守る。それは専門家が果たすべき絶対的な責務でもあります。
もちろん、地震は到底推し測ることの出来ない想定外の規模のものが起ることも考えられますので、完璧という訳にもいかないところはありますが、少なくとも、そういった意識を持って技術的に対処し、災害を出来る限り最小限に食い止めるという努力はすべきだと思います。
家づくりは、儲けるという商的な行為よりも、人間にとって安全であるかどうかという視点でとらえるべき重要な建設行為です。
そのことをないがしろにした家づくりは、言葉は悪いですが、もはや専門家という名を借りた、俗悪行為の何物でもないと思います。
私は何年も前から、木造といえども耐震については、その重要性を強く主張してきました。
お役所にも何度となくその旨を強調し、せめて確認申請上の義務化をするよう訴えてきましたが、法律上その必要はないとの一点張りでした。(今もそうです)
重大な事態や事故に遭遇して初めて反省し、今後このようなことが起こらないようしなければならないなんて答弁が、お役所をはじめ企業にもよくある話ですが、喉元過ぎれば何とやら、なんてこともよくある話です。
耐震設計ということになりますと、いかにも難しい理論を理解する必要があるのではないかというふうに考えがちですが、実際には、とても簡単な理屈からなりたっていますので、必ずしもそのように考える必要はないかと思います。