◇ 女一人
幾つもの山を乗り越えて幾つもの川に流されてとうとうここまで来てしまった夜の侘しさ 朝の虚しさ幾度となく巡り巡って日々が去りひとときの 心の安らぎ求めんと涙の数だけ 織りたたんだきた紙細工だが もう流す涙も 枯れ果ててカチカチとなる 柱時計の針を追う
◇ 静寂の時空
海岸の砂浜に腰をかけ地平線の遠くに見える街並の灯りをただぼんやりと眺めていたスーっと流れる灯りは漁船の灯りだろう静寂があたりを包み手が届きそうな満天の星空およそ大都会では見ることの出来ない自然のきらめきである
◇ 人の道
人の数だけ人生がある出会いの数だけ別れがある別れの涙は出会いの序章人生には涙はつきもの涙の数だけ喜びも感動もまたあるしかしその喜びや感動の多くが長く続かない運命にあることも確かなような気がする
◇ 月に泣く
いつからなんだよ おまえってやつは変わる渡世に 背中を向けて一人意気がる 馬鹿なやつしょせん世間の つまはじきどうせ俺など 場末のごみさ夜空見上げて 月に泣く月に泣く泣く 月に泣く
◇ 夢のあと
あの時の 胸の高鳴りあふれ出る 切ない思いあなたの瞳 まるで真珠その唇は まるで太陽時がほどけて ただ夢のあと侘しさだけが ほらついて来る枯葉の憂い ああ聞えくる
◇ 母の涙
我が子よ 分かって欲しい いつの日かこの母の苦しみ この母の慟哭これが人生 これが常よ夜毎めぐり来る 葛藤を今 遠い彼方へと 追いやって君のため希望の星の光となって輝きを増そう
◇ 秋の宵
川面に浮かぶ 色とりどりのあかり揺れて揺られて 流れて灯るひとつぽつり またぽつり月あかりに写るかすかな人影今日という日の時に任せ楽しいひととき それとも悲しみの涙