長いようで短い人生 心に響く感動と共に生きれたら……
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◇ 人花

旅立ち(4)
-人花-
隣家の庭の片隅に
道路に向かって
咲いていたアジサイ
今はすっかり枯れ果てて
見る影も無い

ついこの間まで
咲き誇っていたのに
雨の好きな花だから
この季節はつらいね

でも君はいいよね
同じ風が吹き
同じ光の時がくれば
また鮮やかに蘇り
満開の笑顔が見せられる
それも
繰り返し
繰り返し

その点
人という花は
たった一つの命しかないんだ
どんなにもがいても
どんなに頑張っても
枯れてしまったら
二度とその笑顔を見ることは無いんだ
君のように
死んだふりなんて
出来ないんだから

君から見たら
自分より随分長い間
咲き続けられるから
うらやましいと
思うかもしれないけど

違うと思うよ
その証拠に
枯れはじめると
みんな慌てて
右往左往してるじゃない
君みたいに
悠然としておれないんだ

時を静かに受け入れ
君を後何回見られるかが
せめてもの楽しみなんだよ
きっと

時を刻み
夢を見ながら
命を燃やす
そして
君の花びらを抱きながら
君の香りを嗅ぎながら
織りたたんできた想い出と
仲間達と
再会を期待しながら
旅に出るんだよ

出来ることなら
君の手をしっかり握り締め
熱い接吻で
身を震わせたかった

君に命がある限り
また美しい花びらを
見せておくれ