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[4-2]技術はしっかりしているか


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ステップ【4】設計ことはじめ(設計事務所か工務店か)



[4-2]技術はしっかりしているか

家づくりにおける技術力について少し考えてみましょう。

実は技術力をどうやって測るかというバロメーターみたいなものは存在しません。あるとすれば、例えばかなり優秀な専門家が、家の工事の工程に応じた検査をして、技術力に優劣をつけていく事ぐらいでしょう。
「わが社の家は大丈夫ですよ」
「わが社の家は構造的には何ら問題はありません」
「腕の良い職人を入れています」
信頼できない業者が良く口にする、まことに根拠がなく具体性のない、これらの決まり文句の数々の中に「技術」という言葉は一切出てきません。

ここでは、良い家づくりをする為に、家づくりにおける「技術」について考えてみましょう。家づくりにおける「技術」とは一体どういう事を言うのでしょうか。

・「納めのワザ」

よく「匠の技」なんて言葉を耳にします。いかにも研ぎ澄まされた技の極意みたいな、免許皆伝を得た職人が腕を振るうみたいなイメージです。神社仏閣を建築する際に、宮大工が釘金物を使わずに組み上げていく「ワザ」のイメージでもあります。

家造りにおける技術(ワザ+スベ)とは、上記のようなレベルまではないにしても、分かり易く言いますと、家を造るのに求められる究極の「納めのワザ」と言って良いと思います。
「納め」とは、木材だけとは限らず、全ての部門(業種)の施工において、材と材との接合部分の取付状態や形のことをいいます。
「ここはどういうふうに納める?」
「この納まりは良くないね」
などと言います。
きっちり正しく納められた接合部のことを、
「良い納まり」
「納まりがいい」
などと表現します。
しかし、『きっちり正しく』の定義がある訳ではありませんし、ましては確立されたマニュアルがある訳ではありません。同じ場所(箇所)でも、大工などの技能者(技術者)により微妙に納め方が違う場合が多いのが一般的です。専門図書などで、「ディテール集」とか「納まり集」とかがありますが、それはあくまで参考図書に過ぎません。

永年にわたる家造りの慣習の中で受け継がれてきたワザが、必然的にマニュアル的な役割を果たしてきたと言っても良いでしょうし、技術者同士(特に大工達)が切磋琢磨して磨き上げてきた、材と材の接合部の美意識から生まれた一種の形と言っても良いかと思います。

この「納めのワザ」が優れているかどうかは、通常の家づくりの場合、実は殆どの人が分かっていないのです。
あの工務店は、腕のいい職人を抱えているとは言っても、腕のいい工務店とは言いません。あの工務店は、いい仕事をするとは言っても、管理能力の高い工務店とは言いません。
つまり家は工務店が請け負って、責任を持って完成させるかもしれませんが、必ずしも、全てにおいて技術力の高い家を完成したとは言い切れません。何故かと言いますと、家そのものは職人の腕(納めワザ)によるところが大ですし、各職人の「納めワザ」の集合体が家なのですから、それこそ全ての職人が、均しく優れた「納めワザ」を発揮してくれたとはどうしても思えないからです。たまたま、あったとしても、それは宝くじを当てるよりもラッキーなこととして理解しなければならないほどの奇遇と言っても良いでしょう。

それでは設計事務所における「技術」と工務店における「技術」について少しばかり考えてみましょう。

・設計事務所における『技術』とは

設計事務所とは何ぞやについてはここでは語りません。インターネットのヤフーやグーグルなどの検索サイトで「設計」とか「設計事務所」などの語句で検索して学習してください。
設計事務所も、いろいろな色合いを持っています。個人、法人を問わず、実態は決して一律ではありません。 ここでは「家の設計」という観点から、「技術」について考えてみます。

家を造るには必ず図面を書きます。昔は大工に直接工事を依頼するケースが多かったのですが、方眼紙に鉛筆を舐め舐めしながら間取りを書いて、お客様と打合せして、決まった間取りを一枚の板に書いて(板図)、現場で完成していくのが普通でした。
今でこそそのような場面は見られませんが、この板図に描かれた形(図面)の「意味」と「納めワザ」が、大工の頭脳に全てインプットされていた訳です。ですから、お客様は出来上がってみないと、どんな家になるのか分からないという、一種お化けのような世界が平然と行なわれてきたのは事実です。それでも、何事もなく、問題もなく受け入れられてきた時代背景がそこにはあった訳ですので、それはそれで一つの家づくりの形だったのでしょう。

大工がよく言う、
「とかく設計事務所が書いた図面はなあ……」
の意味は、
「この書いてある図面では、とても納まらないよなあ」
という意味で、「納めワザ」がいい加減だという意味が込められています。

大学を卒業したばかりの建築の技術者に、矩計図(かなばかりず)という図面を書いてくれと頼んでも、正確に書ける技術者は恐らく数少ないだろうと思います。
建築図面は現場を経験しないと正確な図面は作成できません。これは断言出来ます。もちろん現場を経験しなくても、学問や書物を通して学習すれば、そこそこの図面らしき「絵」は書けるとは思います。しかし、先ほどの大工の言う「納め」を、ほんとの意味で分かった上で図面化している設計技術者は少ないと言われています。確認申請をするための図面(絵)は描けても、大工達が仕事をする為の「納めワザ」を描いた施工図をちゃんと書ける設計者は、かなり少ないという訳です。

どんなに図面の枚数が豊富でも、現場で納まらない図面ばかりでは、もはや図面とは言いがたく、場合によっては、トラブルを引き起こしてしまう、厄介な代物になる可能性も無きにしも非ずです。

設計事務所における「技術」とは、建築、ここでは家づくりという分野において、職人たちが何の疑いもなく受け入れられる、指示書としての確かな意味を持った「納めのワザ」を図面化できる能力と等しいのです。
ところが、全ての箇所を図面化するのは至難のことです。ですから、図面化されなかった部分は、どうしても現場の職人(専門の技能士)たちに委ねるか、知恵を借りなければならなくなってくる訳です。

設計事務所についてはこちらも参考にしてください。

・工務店における『技術』とは

工務店はご存知のように図面に基づいて施工するところです。
家を造るのは工務店そのものではなく、正確にはその工務店に携わっているか、工務店から発注されて仕事をしている職人(専門の技能士)です。ですから、職人(専門の技能士)たちの仕事の集合体が、家の完成という塊なのですと説明したほうが分かり易いかもしれません。
上記の設計事務所のところでも述べましたが、図面に表示された「納めのワザ」は設計者の考えに基づいた一つの形です。しかもそれは紙に書かれた線画に過ぎません。
職人達はその線画の意味するところを捉え、実体を持つ現場というエリアに「材」という固有物を、切る、削る、練る、貼るなどして、一つの形のある物体として完成させていかなければなりません。
その場合、職人たちに求められるのは、立体としての「納めのワザ」を『しっかり正しく』発揮出来るだけの腕(技術)を持ち合わせているかどうかです。
永年修行を積んで磨き上げた、まさに「匠の技」を発揮する舞台は整っている訳ですが、はたして「納めのワザの美」を演じきれる職人が何人いるでしょうか。 一方「あの工務店は良い仕事をする」という評判は、多分腕の良い職人を多く抱えていて、一棟一棟の出来栄えが良いという事で、そういう評価に繋がっているのかもしれませんが、実は工務店に現場を管理する能力の長けた技術者(現場監督)が居て、その優れた手腕のお陰で、そういう評価に繋がっている場合も多々あります。

『優れた手腕』は、契約内容に基づいて、全工程において、材料の調達や職人の適切な手配、機械器具の無駄のない配置等々、そつのない工事管理に優れていることをいう場合があります。勿論これはとても大切な手腕の一つではあるのですが、さらにプラスして、家づくりにおける「納めのワザ」を知り尽くしていて、腕の悪い職人に対して、『しっかりした正しい納め方』を指示徹底できる能力をも持ち合わせている事を言う、と表現した方が正しいと思います。これは職人の腕(技術)の低下を、補って余りある能力として高く評価してもいいと思います。
このような『優れた手腕』を持ち、管理能力に長けた建築技術者を、社内に確保することの重要さを改めて認識する必要があるように思います。
従って、工務店における技術とは、建築、ここでは家づくりという分野において、職人たちの「納めのワザ」そのものも指しますが、現場を管理する技術者(監督)の「納めのワザ」と「現場管理のワザ」を現場で具現化できる能力と等しいのです。

私は、現場におけるこれらの能力のことを「施工力」と呼んでいます。ですから、家づくりに於いては、「優れた設計力」と「優れた施工力」ほど重要なキーワードはありません。
工務店についてはこちらも参考にしてください。


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