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ステップ【4】設計ことはじめ(設計事務所か工務店か)
[4-7]光と風と緑と
私は次のような使命感をもって仕事しています。
◇ 快適で安全な住まいを創造し健康で豊かな暮らしを実現する ◇
この使命感を達成する中で、避けて通れないのが「光と風と緑と」です。これは設計をする上で一番気にしているテーマの一つです。
家づくりは自然との共生の上に成り立っている。と言っても過言ではないと思います。出来ることなら、自然の恵みを最大限に取り入れ、明るく楽しいそして爽やかな日々を送り、そして家族みんなが健康で生き生きとした生活が出来るような、そんな家づくりを理想としております。
住まいに於ける「光と風と緑と」についてじっくり考えて見ます。
「光と風と緑と」は置き換えますと、次のようなイメージで捉えてただくと、より分り易いのではないかと思います。
・光と戯れる
・風と戯れる
・緑と戯れる
◆光と戯れる!
住まいに関わる光には二つの光があります。太陽の光と照明の光です。この他にも、ろうそくの光もそうですし、虫かごに入れれば、ホタルの光もその一つかもしれませんね。
ここでは、太陽と照明の光(明かり)について、それぞれ考えて見ます。
◇ 太陽の光
太陽については、直接の太陽光線(陽の光)そのものもそうですが、いわゆる物体が明るく照らし出される光(明かり)もイメージしてください。
窓からの明かり
住まいに取り入れる光(明かり)の大半は窓からのものです。実は窓の設計は意外と気を使うものなんですよ。
もちろん明るさもそうですが、風通しとか外観上の問題とか強風に対する問題とか、いろいろと解決しなければならないことがあります。設計上の重要な要素の一つと言っても良いでしょう。
窓の大きさは部屋の広さや天井高さによって、また、窓の種類は部屋の機能性や用途によって決められるのが一般的です。
南側と東側の窓
建物の南側に面して取り付けられる窓からの明かりは、その大きさや取付場所によって、光線の強さや角度が、場合によっては夏場の明かり(光線)と冬場のそれとでは大きな違いがあります。
もともと日本の住まいは昔から夏向きに建てるのを良しとしてきました。
これは高温多湿の気候風土から、先人達の長年の知恵から生まれてきたものです。ですから、どちらかと言うと庇が深くて、高床式の開放型住宅が主流でした。いわゆる南方系の民族様式の住まいであったのです。
当時は、もちろんエアコンなるものも、冷蔵庫や洗濯機なるものも、無かった訳ですので、当然自然の影響を直に受けていました。特に夏の高温多湿を少しでもしのぎ易くするための、知恵と工夫が家づくりの随所に取り入れられたという訳です。
わが国の近代建築では、エアコンや冷蔵庫や洗濯機等々は、全世帯に普及してると言っても良いでしょう。これに伴って、窓の機能性やデザインや用途に大きな変化が現れてきたのですね。つまり良かれ悪しかれ、窓の持つ役割に大きな変化が生じてしまったという訳です。
南側や東側に取付ける窓は、大抵の場合庭に出るためのことも考えて、いわゆる掃きだしタイプの開口部を設けるのが一般的だと思いますが、開口部が多すぎたり大きすぎたりすることで、物を置く場所がなかったり明かり過ぎたり、直射日光が必要以上に差し込んだりする場合があります。また開口部を大きく取りたいばかりに、肝心の耐力壁が取れなくなったりする場合も多々あります。こういうことが無いように、適度な大きさの窓を、建物の強度を考慮しながら設ける工夫が大事です。
北側の窓
建物の北側に設ける窓は、太陽光線は当たりませんので、単に明かりを取るだけの目的が一般的ですので、割合と小さ目の窓が多いと思いますが、 ここで少し植物のことを考えて見ましょう。
ご存知なように、植物は太陽に向かって枝葉が成長しますし、顔はいつも太陽に向かっています。つまり南から見た植物が一番いきいきとして、太陽に照らされてキラキラとして美しく見える訳です。ということは建物の北側に植えられた植物は、建物側から見たときが一番美しいということになります。
植物は「緑と戯れる」のところでも述べますが、人に癒しを与え心を和ましてくれる働きがあります。
南側の玄関に入ったら、北側に中庭があり、 その中庭に植えられた植物のいきいきした姿に、疲れも取れて、ホッとするなんて事はよくあることです。ですから、北側の窓は出来れば、その辺のことも考慮して設計したいものですね。
西側の窓
西側に設ける窓は、一般的に西日を出来るだけ避けたいことから小さな窓を設けるのが一般的です。
ただ土地(敷地)の向きが真北方向でなく、例えば右図のように北東に振っている場合などは、設計上難しい判断を余儀なくされる場合があります。このような場合は、庇を深くしたり捨て柱室を設けたりして、太陽光線が直接室内に入り込むのを防ぐ工夫が必要と思います。
浴室やトイレなどの窓
浴室の窓は、家族が風呂に入るのは、夕方から夜が一般的なために、そんなに気にするほどの事はなかったのですが、最近では、必ずしもそうではありませんね。むしろ、窓から差し込む明かりを浴びながら入る風呂は、とても爽快で気持ちの良いものです。そういった意味では、浴室の窓も慎重に考えなければならないと思います。
浴室に設ける窓は、窓の外側に浴室から眺められる庭などがある場合と、そうでない場合で若干考え方が違ってきますが、いずれにしても、窓の高さは、開閉などの操作もありますので、可能な限り低い位置に取付けたほうが良いと思います。
トイレの窓は、ややもすると軽視されますが、そうあってはならないと考えています。窓から差し込む明かりが、便器を照らし、尿や便の色具合を観察することで、自分の健康状態を把握できる場合が少なくありません。そういった意味でも窓はなるべく設けて、明るさを確保したほうがいいと思います。
出窓
出窓は最近特に多く採用されるようになりました。インテリア的な効果や空間の広がりなどが人気なのでしょうが、忘れてならないのは、出窓から差し込む明かりがもたらす部屋の雰囲気の良さもあると思います。
出窓の形状や大きさやカラーは、 タイプによりいろいろありますので、設計の段階でその部屋の雰囲気にあった最適な出窓を選ぶ必要があります。
また大工さんに造ってもらう出窓もありますので、併せて検討する必要があります。
出窓に雨戸をつけない場合は、出来ればガラスを強化ガラスにすることをお勧めいたします。台風などの強風に見舞われた場合、近隣からの飛来物が、窓に直接当たる場合が考えられます。
天窓からの明かり
設計上、例えば中廊下など、どうしても日中暗くなる場所が生じる場合があります。そのために日中から照明をつけなければならないなんてことがあります。出来れば避けたいと誰しも考えます。
その場合の対策として一番効果的なのが天窓です。トップライトなどと呼ばれます。止むを得ず付けるトップライトもありますが、むしろインテリアや光の効果を演出する目的で、積極的に取り付けるトップライトもあります。
またトップライトに似た効果として、部屋の天井近くに取り付ける開口部によって、間接的な明かりを呼び込む効果も期待できます。
これらは上手に取り入れることで、インテリア的にも思わぬ効果を発揮することがあり、設計の中に積極的に取り入れたほうが良いと思います。
ただ屋根に取付ける場合には、雨漏りの原因になり易いですので、施工は細心の注意が必要で、慎重にするべきと思います。余談ですが、屋根からの天窓は同じ大きさの窓の3倍の明るさがあるとされています。建築基準法でも、採光計算をする場合にはこの値が認められてます。
◇ 照明の光
室内の照明にこだわる設計が大変に多くなってきました。
各照明器具メーカーの開発商品には、一昔前までの単に明るければいいという発想は、もちろん今では全くありません。インテリア効果を最大限に発揮するべく新しい商品が次々と世に出回ってきました。実に素晴らしいことです。
こういった背景もあって、室内の照明は一室一灯の時代から一室多灯の時代になってきました。癒しの空間としての部屋づくりには、 どうしてもこの照明の効果をしっかり考えた設計が、今後ますます求められてくるだろうと思います。
天井灯はもちろん、壁取付照明(ブラケット)やダウンライト、あるいはフロアスタンド、足元灯など、また蛍光灯や白熱灯など、あるいは自動点滅やセンサー付等々、それこそ色々な選択要素がたくさんありますので、しっかり勉強しておきたいところですね。
ここで、一つだけ特に注意しなければならないことがあります。
例えば、シャンデリアなどの重たい器具を天井に取り付ける場合などは、必ずその重量に見合った天井補強材を取り付けてもらうようにしてください。地震などの揺れに対して、照明器具が落下して大怪我をする場合があります。現場管理者や大工さんにしっかりお願いしてください。
◆風と戯れる!
夏の涼しい風の爽やかさは、およそエアコンや扇風機などでは味わえない、まさに自然のもたらす恵みじゃないでしょうか。
縁側に吊るしてある風鈴の音が、夏の風情をいっそう引き立たせ、庭にまくうち水が涼しい風を招き寄せる。そしてまた風鈴の音がさらに涼しげに奏でる。
まさに日本の昔からある情景の一こまです。
いつからか、人間はその恵みから断絶し、一つ一つのそれらの情景を、遠い昔に追いやり忘れ去ろうとしています。
こんなことを考えるのは、私だけかもしれませんが、室内のよどんだ空気は、もしかしたら人間の寿命を短くしてるような気がしてなりません。
窓を開けたらスーッと通り抜ける風。海辺に建つ家は潮の香り。山の裾野に建つ家は森の香り。子供も大人も、海や川や山に吹き抜ける風と戯れ、その風のささやきを聞きながら、朝な夕なに暮らしを楽しんできました。
家をつくる時には、この自然の風が、通り抜けし易いような設計をすべきと思います。
家の基本的な形や窓の位置、大きさの検討はもちろんですが、外壁の壁体内を駆け上がり、屋根のてっぺんから逃げるような風の設計や、床下を通り抜ける風の設計を、建物の寿命と言う観点からと、人間の健康と言う観点から、もっと真剣に考察、研究する必要があるような気がします。
◆緑と戯れる!
花や植物が人間に与える癒し的な効果は、ここであえて言うまでもないことでしょうが、その癒しの効果を、最大限享受できるような設計をしなければと思っています。
敷地一杯に建てざるをえないような設計の場合、当然樹木などを植える空地はない訳ですので、どうしても味わいのない家になりがちですが、設計に工夫を凝らすことで、例えば、狭いながらも、中庭や坪庭などを取り入れることが出来れば、少しは違った感じの家になりますね。
玄関廻りや窓廻りなど、工夫することで、ほかの家とは違う雰囲気のオリジナルなあしらいも出来ますし、ウッドデッキとの絡みなどを考えると、そんなにお金をかけなくても、とても面白い空間が出来ます。工夫してみてください。